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田代尚機のチャイナ・リサーチ

過熱する米中貿易戦争の現在 トランプ劇場のシナリオの結末は

トランプ大統領に焦りも?(Getty Images)

 筆者は以前、〈米中貿易戦争は“プロレス”だ トランプ大統領が描く“ベストシナリオ”は?〉(2019年2月27日公開)と題して、“トランプ劇場には最初からしっかりとしたシナリオがあるのではなかろうか”という分析を書いた。ただ、政治、経済、金融は刻々と変化している。現在進行中のシナリオは、途中で、最初にいくつか用意されたシナリオの中でも過激なものへと差し替えられているのだろう。

 米中のファイトはヒートアップし、今や場外乱闘を繰り広げるかの勢いだ。8月23日夜からの動きを簡単に辿ってみよう。

 中国国務院関税税測委員会は23日夜、750億ドル相当のアメリカ原産輸入品について、10%あるいは5%の追加関税率の引き上げを行うと発表した。一部は9月1日、残りは12月15日から実施される。トランプ大統領は8月1日、「3000億ドルの中国輸入品に対して10%の追加関税を課す」と発表しており、これはアメリカへの報復措置であることは明らかである。

 この発表を知ったトランプ大統領は激怒、ツイッターを通じて中国を批判。通商代表部はすぐさま、第1~3弾の2500億ドル相当の輸入品に対する追加関税率を25%から30%に引き上げるとともに、第4弾の3000億ドル相当の輸入品に対する追加関税率をそれまでの10%から15%に引き上げると発表した。

 ここで中国はさらに反撃を加えるために元安誘導をするのかと思われたが、意外にも、オンショア市場における26日の人民元対ドル基準値は僅かではあるが、人民元高に設定された。25日に急落したオフショア市場の日中の動きをみると、それ以上の人民元安が止まっている。27日の基準値は大幅に上昇しているものの、前日の終値と比べればかなりの人民元安水準であり、中国人民銀行は急激な人民元安に対して、それを阻止するような動きを見せている。

 G7サミットに出席、フランスのビアリッツを訪れていたトランプ大統領は26日、中国との貿易協議を再開すると表明している。「米中担当者が週末、2度にわたり、電話で協議した。中国は取引を望んでいる」とも述べているが、中国外交部の報道官は26日、「そのような状況であるとは聞いていない」と明言している。

 一体どうなっているのだろうか。

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