田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国経済が示すヘリコプターマネーの問題点

 また、ゼロ金利政策のように、不特定多数に向けた政策は、当局が望むようには資金は流れていかない。中国では金融緩和の結果、株式市場や不動産市場、あるいは背後に強力な政治的発言力のある重厚長大産業に属する企業だけに資金が流れてしまったといった苦い経験がある。潜在成長力の低い日本では、中国以上に実体経済への資金供給は難しいだろう。

 実体経済に資金が流れなくとも、株価が上がれば資産効果が働くはずだといった意見もみられる。しかし、多数を占める海外投資家がより多くの利益を得るような市場においては資産効果も小さい。

 日本企業には、中国やアメリカ企業のように背後に大きな市場がない。また、少子高齢化で日本市場は縮小に向かっている。その上、多くの日本人は変化を嫌い、多くの経営者はアニマルスピリットをなくしている。経済成長といった観点から言えば、市場環境、供給サイド、社会そのものに根本的な問題がある。

 いろいろな側面から、ヘリコプターマネーに関する議論が進められている。残念ながら、日本銀行が無尽蔵に資金を供給し、その資金で政府が公共投資を行うといったスキームでは、日本経済の病巣を取り除き、安定成長を取り戻すのは難しい。

文■TS・チャイナ・リサーチ 田代尚機

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