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韓国元徴用工訴訟 三菱重工への「資産売却命令」に打つ手はないのか

韓国の文在寅・大統領は「強制執行は望ましくない」と語っていたが…(写真/EPA=時事)

韓国の文在寅・大統領は「強制執行は望ましくない」と語っていたが…(写真/EPA=時事)

 戦時中に強制労働させられたと主張する韓国人らが損害賠償を求めた元徴用工訴訟では、2018年に韓国の最高裁で三菱重工業への賠償命令が確定。同社が支払いを拒否するなか韓国・大田地裁が9月27日、すでに差し押さえている同社の資産売却命令を出した。

 三菱重工側は即時抗告の構えだが、差し押さえ資産は、同社が韓国内に持つ商標権2件と特許権6件の計約8億400万ウォン(約7580万円)相当。どんな資産なのか。韓国・漢陽女子大学准教授の平井敏晴氏の解説。

「特許権は、船舶の動力源であるタービンの排ガスを利用して電気を作り出す技術に関するもの。特許出願によって既に内容が公開されており、機密性はないが先端技術の基礎を含むと思われる。今後、韓国企業の手に渡ると、三菱重工が韓国で関連技術の特許を取得しにくくなる恐れがある」

 実際の売却方法は「競売」が有力視される。

「この場合、日本の個人や法人も競売に参加できる。仮に日本企業が落札すれば、『日本の資金を元徴用工の賠償に充てた』との大義名分が成り立つので、韓国政府は日本企業の落札を望んでいるかもしれません」(同前)

 日本政府は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「請求権問題は解決済み」との立場だ。岸田文雄・新首相も「徴用工問題で日本が譲る余地はない」と断言してきたが、平井氏はこう指摘する。

「徴用工問題では日本製鉄も同様の訴訟を抱えていますが、同盟国間の協調を重視する米・バイデン政権の意向もあり、日本政府が断固たる対抗措置を取るのは難しいのでは。『韓国のTPP加盟に難色を示す』程度でしょう。一方の韓国側も、資産の現金化を強行すれば日本との関係がさらに悪化する懸念がある。韓国に進出する日本企業がリスク回避でビジネスを縮小し、韓国離れが加速する可能性も大いにあります」

 日韓のにらみ合いは続く──。

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

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