田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国が「ロシア貿易拡大」で狙う漁夫の利

中国側が繰り返す米国への厳しい批判

 米国のサリバン大統領補佐官は14日、ローマで中国の外交担当である楊潔チ・政治局員と会談したが、「中国によるロシア支援に深刻な懸念を伝えた」と報じられている。

 中国を牽制するためには中国を孤立させる必要があり、それには経済規模が大きく、中国との取引の大きなASEANを米国が取り込めるかどうかが重要となる。しかし、それは簡単ではなさそうだ。

 3月10日の外交部定例記者会見において、鳳凰衛星テレビの記者が、ASEANの議長国を務めるカンボジアの外務相の発言を引用し、次のような趣旨の質問をしている。

「3月28日に実施が予定されていた米国・ASEAN・サミット会議だが、ASEAN首脳の一部が出席できないため延期された。ホワイトハウスが一方的に日程を宣言したことで、ASEANの一部の国家が不愉快に思っているようだ。中国側はこの点についてどう評論するか?」

 これに対し、趙立堅報道官は、「米国がASEANで合作を行うときは、相互尊重の精神に基づき、ASEANを支持することを中心に置いた行動を以て、地域の平和、安定、繁栄などに有利になることをするよう希望する」と答えている。

 中国の米国観は日本ではほとんど報道されていないが、非常に厳しいものだ。

 たとえば、3月8日の外交部記者会見では、ロシアが軍事行動を通じて、米国がウクライナの生物ラボを利用して生物軍事計画を展開していたといった報道を紹介し、「これは氷山の一角で、世界30か国で336の生物ラボをコントロールしている。米国フォート・デトリックで大量バイオ軍事活動を展開していた」と指摘、「米国がバイオ武器禁止公約の査察メカニズムを拒否している内外のバイオ施設の査察を拒絶している」と批判している。

 3月10日の記者会見では、ホワイトハウスの反論を引用して質問する西側報道陣に対して、中国側は繰り返し米国への厳しい批判を展開している。

 制裁する側も無傷ではいられない。支持率を回復させ、分裂寸前であった米国内を“反ロシア”で団結させつつあるバイデン政権だが、金融市場、経済が崩壊してしまったら元も子もない。プーチン・ロシアは当然、存亡の危機だが、バイデン・米国もここが正念場であろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。