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【日本株週間見通し】不透明感強く、東京株式市場は一進一退か

 米国でも懸案事項は多い。9月28日に米10年債利回りは一時4%を超えた。欧州発の債券売りが波及した形ではあるが、欧州での事情次第では再び4%超えを試す可能性もあり、金利上昇を通じた株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の低下圧力には注意したい。一方、より重要なのは企業業績の悪化を巡る懸念だ。29日には米企業の決算がいくつかあった。まず、半導体大手マイクロン・テクノロジーの9-11月期売上高見通しは市場予想を大幅に下回ったほか、設備投資額は2023会計年度に30%減少する見通しという。半導体需要の減速はかねてから明らかになっていたため、驚きはないが、下振れ幅や設備投資額の減少幅は想定よりも大きい印象だ。次に、米スポーツ用品メーカー大手ナイキの決算も、北米での需要の堅調さは確認されたものの、在庫調整が懸案事項として残った。

 そして、最も印象的だったのは翌日の東京市場での自動車関連株の急落にも繋がった中古車販売の米カーマックスの決算だ。6-8月期業績は多くの項目で市場予想を大幅に下振れた。会社側は金利上昇と先行き不透明感が消費者の購入能力を引き下げていると説明。これまで、部材不足で新車納入が遅れるなか中古車販売は活況で、米国では中古車価格がピークアウトしたとはいえ高止まりしていた。そのため、依然として中古車業界は需要が堅調だと思われていたが、そうした見通しが変化してきていることが今回の決算で示唆された。民間消費はまだ堅調とされていた米国も、住宅市場を起点として既に消費は減速し始めており、それがいよいよ住宅以外の耐久財にも及んできたということだろう。米国の景気動向には一段と注意が必要になってきた。

 米アップルの最新スマートフォンの増産計画撤回などもあり、大手優良企業でも景気後退を避けることはできないとの懸念が強まっている。7-9月期決算の発表が始まる10月下旬までは、これまでのような企業業績に関するネガティブな報道が相次ぐ可能性があり、一株当たり利益(EPS)への低下圧力が続きそうだ。

 こうした懸案事項が渦巻く中での週末の米雇用統計とあって相場も神経質にならざるを得ない。景気が悪くなっても、中央銀行が金融緩和で下支えしてくれれば問題ないが、現在、インフレ抑制に必死な米連邦準備制度理事会(FRB)は反対に積極的に金融引き締め中だ。引き締めを続けざるを得ないのは、物価指標が依然としてインフレを示しているからであり、その主因は粘着質の強いサービス分野でのインフレだ。ただ、米コア消費者物価指数(CPI)の3割と最大の割合を占める住居費については、先行指標である住宅価格に4月を高値とした明確なピークアウト感が見られている。27日に発表された7月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)は前年同月比で統計開始後最大の減速を示した。

 そのため、残るインフレでの懸案事項は労働市場の逼迫を通じた賃金上昇だ。インフレにピークアウト感が見られるとはいえ、価格水準としては記録的な高水準での高止まりが続いており、労働者による賃金引き上げ圧力は強い。市場の逼迫もまだ続いているため、雇用者側も高賃金で労働者を惹きつける必要がある。賃金交渉を巡る労働交渉も活発化している。今年前半だけで従業員投票で過半数の支持を得て代表権を認められ労使交渉に臨む労働組合の数は2005年以来の多さとも伝わっている。ストライキの数も前年比で8割増という。最後に残る賃金インフレはかなり手強いことが想定される。週末の米雇用統計では、平均賃金の伸びに注目したい。

 ほか、週末には安川電機<6506>の決算発表を控える。足元の環境下から好決算・好反応は期待できないだろうが、現状の株価水準から更に売り込まれてしまうのか、それとも短期的にもあく抜け的な動きになるのか注視したい。

 今週は10月3日に9月日銀短観、9月新車販売台数、日銀金融政策決定会合の「主な意見」(9/21~22開催分)、米9月ISM製造業景況指数、4日に米8月製造業受注、5日に米9月ADP雇用統計、米9月ISM非製造業景況指数、6日に地域経済報告(さくらレポート)、7日に8月家計調査、8月景気動向調査、米9月雇用統計などが発表予定。

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