ビジネス

年収100億円運用部長分析 AIの金融参入でどうなるのか

 なぜかと言えば、プログラムの数だけ簡単にファンドを立ち上げられるから。もうひとつの理由は人材面。今、アメリカではAIを勉強する学生が多く、以前ならIT業界に就職していたのに、破格の高給に惹かれてヘッジファンドに入るケースが増えている。彼らは失敗してもIT業界に簡単に転職できるので、一攫千金狙いになりがちです。その2つの理由で“屍”が増えやすいのです。

──IT業界から人工知能の技術者が有力ヘッジファンドに超高給で引き抜かれている、と本書も書いていますね。

清原:アクティブ運用(市場平均を上回るリターンを目指す運用)の世界はゼロサムゲームで、誰かがプラスになれば誰かがマイナスになる。全体として見ると、社会に対して何の付加価値も生まない。金融工学も客を煙に巻いてお金を出させるために使われてきたようなものです。なのに、金融の世界にもっとコンピュータ・サイエンスをやる人間が増えないと日本は世界から遅れてしまう、などと言う著名な経済学者がいますが、寝言もいいところです。

 私は今から予測しておきますが、AIが金融の世界に入ってくれば、流行語になるくらいAI詐欺が増え、優秀な人材が無駄に使われるだけ。いいことはありませんね。

【PROFILE】きよはら・たつろう/1959年島根県生まれ。タワー投資顧問運用部長。1981年東京大学法学部卒業後、野村證券入社。1992年に退社し、ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券などを経て1998年から現職。

【協力】伊藤博敏(ジャーナリスト)

※SAPIO2016年12月号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。