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日本人から徴税してアメリカから兵器を買う 岸田首相が理解を求める防衛増税の矛盾

未来世代にツケを回さないために「増税が必要」なのだという(時事通信フォト)

未来世代にツケを回さないために「増税が必要」なのだという(時事通信フォト)

 2022年12月、突如として「防衛費増額のための増税」を表明した岸田文雄首相。自民党内からも反対の声が噴出したが、結局、防衛費の総額は2023年度から2027年度の5年間で43兆円規模(過去5年間の約1.5倍)と決まり、2027年度からは不足する年1兆円の財源補填のため、所得税・たばこ税・法人税の「増税」が政府与党の方針として固まった。岸田首相は「(防衛増税は)将来世代への責任として対応すべきもの」などと国民に理解を求めるが、その後、閣議決定された2023年度当初予算案で、建設国債の使い道に戦後初めて「防衛費」が含まれることになり、「(防衛予算確保のための)国債発行は将来世代にツケを回すこと(借金)」と否定してきた首相発言との矛盾を指摘する声もある。

 しかし、岸田首相の経済政策の一貫性が問われるのは、それだけではないようだ。金融・経済を題材にした小説『エアー3.0』を執筆する小説家・榎本憲男氏が、首相が2021年の就任以来、看板に掲げる経済・財政政策「新しい資本主義」との整合性について考える。

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 岸田首相が防衛予算を確保するための増税を発表して、議論を引き起こしている。この防衛予算のための増税について、岸田首相が唱える「新しい資本主義」や「新自由主義からの脱却」とどのように整合性が取れるのかについて考えてみたい。

 そして、判断材料として使うのは昨今巷を賑わしている経済理論「MMT(現代貨幣理論=Modern Monetary Theory)」だ。というのは、実は僕は、この増税の発表がある前までは、岸田首相はMMT支持者ではないかと思っていたのである。たとえ口では否定しているかのような報道に接してさえ(2022年1月26日の衆院予算委員会での発言「(岸田政権では)MMT政策は採っていない」など)、MMTがあまりにも異端の学説であるので、一国の首相としては支持を表明しにくいだけではないか、と勘ぐっていたのである。実はいまMMTはひそかにパワフルな経済理論になりつつある。経済政策や財政政策の議論は大きくは、MMTを有効と見なすか、それとも異端の経済論として退けるべきかに二分されている。

 けれどこの度、防衛予算確保のための増税を発表したことで、ちょっと分からなくなった。なぜなら、MMTによれば防衛費増額のためには増税などする必要はないからだ。では、まずMMTとはなんなのか、簡単に紹介しよう。

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