5月18日、車列が続く高速道路を逆走する青い車がカメラにとらえられた(NXCO中日本名古屋支社提供/時事通信フォト)
相次ぐ外国人ドライバーによる交通違反や重大事故を受け、SNSでは外国免許を日本のものに切り替える「外免切替(外国免許切替)」の厳格化や廃止などを求める声が高まっている。学科試験が「10問中7問正解」で合格となることや、届け出る住所が一時滞在中のホテルなどで許されるなど、一部で「緩すぎる」と批判される外免切替制度。この問題を数年前から取材する自動車生活ジャーナリストは「抜本的な改革が必要」と訴える。フリーライターの池田道大氏がレポートする。
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外国人ドライバーによる交通違反・事故が相次いでいる。5月14日には、中国籍の男(42)が埼玉県三郷市の市道で下校中の小学生の列に車で突っ込み4人に重軽傷を負わせ、その後逃亡するひき逃げ事件が起きた。同18日には、ペルー国籍の男(34)が三重県亀山市の新名神高速道路を逆走し、車2台と衝突。逮捕されたいずれの容疑者も、「外免切替」で日本の運転免許証を取得していた。
外免切替とは、外国人が母国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えること(日本人が外国で取得した運転免許を切り替える際の手続きにも使われる)。中国やベトナムなど、「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」に加盟していない国の人などが外免切替を行う場合、日本の運転免許試験場で行われる「知識確認(学科試験)」と「技能確認(技能試験)」などに合格する必要がある。
一連の事態を受けて、自民党の小野寺五典政調会長は制度の見直しを政府に求める考えを示した。さらに警察庁の楠芳伸長官は22日の定例会見で、外免切替の制度を見直す方針を明らかにした。観光のため短期滞在する外国人が申請できないように住民票の写しを求めるほか、「簡単すぎる」とされる学科試験の問題数を増やすことを検討するという。
「最大24言語対応」「住所はホテル可」で希望者殺到
だが、実は外免切替におけるこうした問題は以前から指摘されていた。2年ほど前から外免切替の取材を続ける自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が指摘する。
「2023年の夏頃から中国のSNSに『日本で免許を取ろう!』などの書き込みが現れて、日本の外免切替が注目され始めました。さらに2024年6月頃から政府が学科試験に対応する外国語を最大24言語まで増やしたこともあって様々な国の人が外免切替を求めるようになり、この年の秋には先着順に手続きを行う運転免許試験場の入口前に外免切替を求める外国人の行列ができるようになりました。
一方で当時から、訪日旅行客が滞在先のホテルで『一時滞在証明書』を発行してもらえばホテルを住所にして申請できることや、学科試験(知識確認)の問題が〇×式の二者択一で、10問中7問に正解すれば合格になることなどが主に安全面から問題視されていました。実際に『学科試験は幼稚園生の問題みたいだった』とテレビのインタビューで語った外国人受験者もいました」
予約制が始まる前、東京・府中運転免許試験場前の歩道には夜明け前から外免切替を求める行列ができていた(2024年10月。撮影:加藤博人)