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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】澁澤倉庫 Research Memo(2):専門性やDX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業

*14:02JST 澁澤倉庫 Research Memo(2):専門性やDX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業
■事業概要

1. 会社概要
総合物流企業である澁澤倉庫<9304>は、1897年、“日本資本主義の父”と言われる渋沢栄一によって創業された。渋沢栄一は明治から昭和初期にかけて官僚や実業家として活躍し、第一国立銀行や東京株式取引所(現 (株)東京証券取引所)など数多くの企業の設立・経営に携わった明治期の偉人である。なかでも「わが国の商工業を正しく育成するためには、銀行・運送・保険などとともに倉庫業の完全な発達が不可欠」との信念により早くから物流の重要性を指摘し、自ら事業主となって、日本で最も古い近代的倉庫企業の1つと言われる澁澤倉庫部を創業した。

同社はその後も事業を拡大し、昭和初期にかけて主要港をはじめとする全国に支店を開設、戦後は子会社設立などによって陸・海・空へと領域を拡大して総合物流の体制を築いていった。その後、顧客のニーズに合わせて海外展開を加速する一方、好立地にある所有不動産を活用して不動産賃貸業も拡充している。ウクライナ情勢などに起因する燃油費高や円安などリスクが増す現在においても、同社は渋沢栄一の精神を基軸に、専門性の強化や機械化、DXによる自動化などにより総合物流企業として進化を続けている。

倉庫業を祖業に物流事業と不動産事業を展開
2. 事業内容
同社は倉庫業を祖業とする総合物流企業であり、現在の事業は物流事業と不動産事業に大別される。物流事業はさらに、国内ロジスティクス(物流拠点運営、陸上運送、港湾運送、そのほかの物流)と国際ロジスティクス(輸出入・フォワーディング、BPO、海外事業)、情報システムに分けられ、同社と国内・世界各地の関連会社が有機的に連携しながらそれぞれの地盤で事業を強化している。取引先は、飲料・日用品を主力に、アパレルから家電まで多岐にわたっている。不動産事業では、保有不動産を生かした不動産開発賃貸、不動産管理などを行っている。例年、物流事業と不動産事業の営業収益構成比は9:1と偏るが、営業利益においては両事業がほぼ同等の比率を占め、近年は物流事業の構成比が高まってきている。

(1) 国内ロジスティクス
(a) 物流拠点運営
物流拠点運営は、国内主要都市をカバーするネットワークを基盤に、倉庫保管、流通加工、輸配送機能と多様な商品の取り扱いノウハウを融合した、顧客に最適な物流サービスを提供している。

倉庫保管では、一般貨物向けの常温倉庫に加え、可動式ラック倉庫、定湿・定温倉庫、危険品倉庫など、最適な保管環境を提供するとともに、顧客の商品特性に応じた多様な荷役機器を有し、サプライチェーンマネジメントの戦略拠点として倉庫・配送センター機能を提供している。流通加工では日用品やアパレル、飲料や食品に至るまで、幅広い商品を対象に、検品・詰め替え・ラベル貼付などを行う。また、生産受託では自動車部品など部材の集約や組み立てを行うサービスを提供している。輸配送では、倉庫・配送センターのスケールメリットと全国をカバーする集車ネットワークを活用し、納期・製品・輸送ロットに最適な輸送モードを提供する。特に首都圏でのECや店舗向け配送では、自社軽貨物サービスによる即日配送やリバースロジスティクス、店舗間在庫移動などにも対応している。

さらに、自社開発した倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)によるリアルタイムな在庫照会やEDI(電子データ交換)連携のほか、物流データ分析に基づいた調達計画や在庫配置計画の立案などDXとイノベーションを活用した物流ソリューションを提供し、労働力不足への対応やCO2排出削減などの社会課題の解決にも取り組んでいる。

(b) 陸上運送
陸上運送では、東名阪や千葉地区といったドミナントエリアを基盤に、全国に長距離輸送・地場輸送、共同配送、特殊車両輸送、海上コンテナ輸送、クロスドック輸送などのサービスを提供している。陸上運送サービスの最大の特徴は、トレーラーや大型車など豊富な車両と全国ネットの営業網を生かした大量ラウンド運行※1による「幹線輸送」と、自社開発の輸配送システムなどによる「地域内の地場配送」の連携にある。また、環境問題や2024年問題※2など物流における社会課題の解決策として、様々な商品をカテゴリーごとに物流拠点に集約して同一配送先に届ける共同配送を行っており、配送のローコスト化、配送先の荷受け作業の効率化、積載効率向上によるGHG(温室効果ガス)の排出、待機時間の削減、乗務員不足の解消などに寄与している。さらに、子会社と連携した鉄道輸送やフェリー輸送のモーダルシフト※3もワンストップサービスで提供しており、乗務員の労働環境改善、環境負荷低減や自然災害発生時のBCP(Business Continuity Planning)※4対策に貢献している。

※1 ラウンド運行:複数の輸送ルートを組み合わせて空車区間を減らし、効率的に輸送する手法。
※2 残業規制により輸送能力が不足すること。
※3 トラックなどによる自動車貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶へと転換すること。
※4 自然災害やテロ、システム障害など緊急事態時の事業継続計画。

(c) 港湾運送
船舶代理店として船舶の効率的な入港を多角的に支援している。パイロット(水先案内人)やタグボートの手配、海上保安庁、税関、検疫所など関係省庁への各種手続き、B/L(船荷証券)発行に至るまで、広範囲にわたるサービスを提供している。

また、船内荷役やはしけ運送などの港湾運送業務でも多くの実績がある。特に在来船の船内荷役では、主要港での長年にわたる経験やノウハウを生かし、鋼材などの長尺物や穀物、重機、プラントといった大型貨物の積み卸しや積み付け、ラッシング(固縛)などの作業を行っている。

(d) その他の物流
その他の物流として、文書保管・トランクルームサービスや引越し・家財保管サービスを提供している。文書保管・トランクルームサービスでは、都市部近隣の強固なセキュリティの施設において、顧客のオフィス文書などを保管するほか、集配専用車による輸送サービスや機密文書の廃棄処理などのサービスを提供している。引越し・家財保管サービスでは、オフィスの移転作業や社員の引越し、リフォーム・建替えに伴う家財保管を行っている。海外転勤時などの家財保管サービスにも対応している。同社は国土交通省の「優良トランクルーム」、全日本トラック協会の「引越優良事業者」、EMS国内規格である「エコステージ2」といった認定・認証を受けている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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