猛烈に自己成長が加速する勉強法とは?(イメージ)
生成AI(人工知能)の台頭が象徴するように日進月歩でテクノロジーが進化する中、人間にも最新情報やスキルの習得によるバージョンアップが求められている。新たなスキルや知識を身につける「リスキリング」への注目が高まり、「転職」によるキャリアアップを目指す際にも継続的な勉強が不可欠だ。それを成し遂げる戦略のが、自分の得意な分野、能力をさらに伸ばす「長所進展」と不得意な分野、苦手な部分を克服する「短所克服」のための勉強法だ。具体的にはどうすればいいか。
これまで10万人以上に教え、SNSでは100万人超のフォロワーを有する精神科医の樺沢紫苑氏が、「勉強法」の真髄を語りつくした著書『勉強脳』より一部抜粋、再構成して自分の無知を見極める「短所克服」勉強法について解説する。【前後編の後編。前編から読む】
「アウトプット」によって自分の「無知」をあぶり出す」
哲学者ソクラテスの言葉に「無知の知」というものがあります。自分の「無知」を知っている人が最も賢い、ということです。これは、凄い発見だと思います。
勉強法においても、「無知の知」という発想は大いに役立ちます。自分が何を知っていて、何を知らないのかを明らかにすることが、物凄く大切です。「自分が何を知らないのか」が明らかになれば、その知らない部分を勉強すればいいだけです。
何か教科書を暗記するにしても、「記憶されていない」部分が明らかになれば、その部分を徹底的に暗記すればいい。それを繰り返していけば、必ず満点がとれます。自分の「無知」な部分がドンドン、少なくなっていくわけですから。
では、自分が何を知っていて、何を知らないのかを明らかにするにはどうしたらいいのか? それは、「アウトプット」をすればいいのです。「アウトプット」しない限り、自分が何を知っていて、何を知らないのかは明らかになりません。
例えば、「問題集を解く」というのもアウトプットの1つです。問題集を解いて間違えれば、自分の「知らない」部分が明らかになります。人に教えていて、上手に説明できなければ、自分の「知らない」部分が明らかになります。
「教科書を読み直す」ことは、アウトプットではなく、インプットに相当します。つまり、教科書を何度も読み直すようなインプット中心の勉強では、「自分が理解できていない部分」を発見することができないので、いつまでも「無知」のままなのです。
自分の「無知」な部分を発見して、「無知」な部分を徹底して強化することで、自己成長が猛烈に加速する。これが「無知の知勉強法」です。しかし、言葉でいうのは簡単ですが、実際には簡単ではありません。
ソクラテスの言葉のように、「無知の知」の境地に達した人は本当の賢人であり、普通の人が「無知の知」を自覚することは非常に難しい。
能力が不足している人は、自分の能力不足に気づかない
現在では、これは心理学でも証明されています。
心理学者ダニングとクルーガーは、被験者たちに論理的推論についての試験を行い、自分の成績を見積もらせたところ、平均成績が下位「12%」の学生は、自分の論理的推論能力を「68%」と物凄く高く推定したのです。成績が悪い人ほど、自分はそれほど成績が悪くないと認識している。能力が不足している人は、自分の能力不足に気づかない。これは、「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれます。
本当に「無知」な人ほど、自分を「賢い」と思い込んでいて、「無知」と認識することができない。それだけ、「無知の知」の境地に達することは難しいのです。
しかしながら、テストを受けたり、問題集を解いたり、人に説明したり、「アウトプット」をすることによって、自分の「無知」の部分が明確にあぶり出されます。
アウトプットを活用して、自分の「無知」の部分を意識し、そこを強化していく。「無知の知勉強法」をすることで、猛烈に自己成長が加速します。
※樺沢紫苑著『勉強脳』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成
■前編記事から読む:15ヶ国語を話せるようになったマルチリンガルの「勉強は大変じゃない」の言葉からわかる“長所を伸ばす勉強法の極意”
【プロフィール】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)/精神科医、作家。1965年札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(62万人)、X(26万人)、メールマガジン(12万人)など累計100万フォロワーに情報発信をしている。著書55冊、累計発行部数260万部のベストセラー作家。シリーズ累計100万部突破の『アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、『読書脳』、『記憶脳』(サンマーク出版)、『神・時間術』(大和書房)、『ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)など話題書多数。