首都圏からの進学者が急増している背景は(東北大学と北海道大学。時事通信フォト)
少子化が進む一方で、首都圏を中心とした中学受験ブームは過熱している。首都圏模試センターによると、中学入試の受験者数・受験率はともに高止まりを続けており、2025年度の受験者数は5万2300人、受験率は18.1%だった。その余波とも言える現象が、地方大学進学者に占める首都圏出身者の割合の変化から見えるという。フリーライターの清水典之氏がレポートする。
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“旧帝大(旧帝国大学)”と呼ばれる北海道大、東北大、東京大、名古屋大、大阪大、京都大、九州大の7大学は、その地域を代表する国立大学であり、地元の進学校に通う学力優秀な生徒が進学先として選ぶことが多い。従来、旧帝大への進学は地元勢が優勢だったが、ここ数十年で徐々に変化しているという。
『受験天才列伝 日本の受験はどこから来てどこへ行くのか』(星海社新書)などの著書があり、Xアカウント「じゅそうけん」で11万人のフォロワーをもつ伊藤滉一郎氏は、今年6月2日にXで次のようにポストした。
〈首都圏高校からの進学者数(2012→2020)
北海道大学(361→583)
東北大学(375→620)
京都大学(244→365)
九州大学(61→129)
早慶に限らず、地方旧帝大も首都圏進学校出身者の割合が急増しています(さらに多くは卒業後関東に戻る模様)〉
2012年から2020年までの間で、首都圏高校から地方の旧帝大(北大、東北大、京大、九大)への進学者が激増していることを示すデータである。北大は361人から583人、東北大は375人から620人、京大は244人から365人、九大は61人から129人と、1.5〜2倍程度にまで増えている。
大学受験の現場で、いったい何が起こっているのか。伊藤氏本人に話を聞いた。
「各大学の公式サイトや受験生向けのパンフレットなどから独自に情報を集計した結果で、あまり世に出ていないデータだと思います。地方の旧帝大で首都圏からの入学者が増えているということは、地元勢や他道府県勢が入学定員から押し出されていることを意味します。阪大と名大は、あまり変化がなかったので、Xのポストには挙げていません」
大阪大、名古屋大は大都市圏にあるため、地元の教育熱も高く、私立の中高一貫校や伝統的な公立進学校も多い。進学者に占める割合も地元出身者が牙城を守っているが、他の地方旧帝大は、首都圏の受験生の進出により、地元勢が後退を余儀なくされているのが現状だという。