「みんなで大家さん」を傘下に持つ共生バンクグループ会長の柳瀬健一氏
本誌『週刊ポスト』前号(2025年8月29日発売号)が報じた不動産投資商品「みんなで大家さん」の騒動はさらに拡大した。配当が2か月連続で止まり、出資者の不安はピークに達している。「みんなで大家さん」は個人投資家から総額2000億円超を集めたが、なぜここまで大きなトラブルに発展してしまったのか。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)【全3回の第2回】
国会でも追及されたポンジスキームの疑い
「みんなで大家さん」を傘下に持つ共生バンクグループ全体でどれほど資産を持っていようが、不動産投資ファンド「シリーズ成田」の配当とは関係ない。投資対象不動産である成田PJ(「共生日本ゲートウェイ成田」プロジェクト)用地は、共生バンクが展開してきた他の不動産ファンドとは、別の投資案件だからだ。他の土地を売却できたからといって、シリーズ成田の配当に回せるわけもない。
みんなで大家さんが展開している不動産投資は不動産特定共同事業法(不特法)に基づき、文字通り特定の不動産開発目的で出資を募り、その事業で得た収入を配当する。昨今、ネット上で流行っている不動産クラウドファンディングもこれにあたる。つまり個別の不動産投資事業で完結する投資であり、他の物件で集めた資金を別の事業の配当に回せば、法に触れる。いわゆるポンジスキームという投資詐欺にあたる。
みんなで大家さんについては、国会でもポンジスキームの疑いを追及されてきた。共生バンク側は本誌の質問に対しても、「法令を遵守しておりますので、(ポンジスキームには)全く該当は致しません」(管理本部)と頑なに否定している。加えて、今回の配当ストップに際しても、グループ代表の柳瀬健一(59)は優良資産が多いから安心してほしいと訴えてきたが、それとこれとは別問題なのだ。
で、成田PJに限っていえば、前号で書いた通り肝心の事業は、2019年10月に成田市の事業許可を得たあと、何も建物ができていない。グループ内の開発業者に土地を賃貸し、投資家にその家賃収入を分配してきただけだ。本来、収入がないのだから配当できるわけもない。ポンジスキーム疑惑も、そのあたりから取り沙汰されてきた。