いざ退居を求められたらどうすればよいか(イメージ)
老後を安心して過ごすための老人ホーム。入居が決まれば一安心かと思いきや、終の棲家として選んだホームから突然「出て行ってください」と退去通告を言い渡される事例が頻発しているのだ。思いもよらぬ事態に直面したときに対応する術はあるのか。
老人ホームアドバイザーの伊藤直剛氏(N-TAKE代表取締役社長)が言う。
「近年、施設側からの『退居通告』をめぐるトラブルは増加の一途を辿っています。主な原因は代金の未払いや滞納、他の入居者や職員とのトラブル、病気の悪化など。近年は『入居一時金』が不要の施設が増え、入居者の間口が広がったことも、トラブル増加の背景にあると考えられます」
自宅を売ってしまった
施設からの退居通告には様々な理由があるが、いざ退居を求められた場合、一般的には3か月ほどの猶予期間があるとされる。
それまでに転居・転院先が見つからない場合はどうなるのか。介護施設でのトラブルに詳しい山田大仁弁護士(ひろむ法律事務所)はこう言う。
「退居通告に期限が設けられていても、それは『契約解除の予告』に過ぎず、自力執行はできないため直ちに強制的に追い出されることはありません。日数要件(予告期間)は意識しつつ、期限伸長も含め施設と協議していくことになるでしょう」
もし提示された退居事由に納得できず、施設との話し合いがもつれた場合などは、弁護士が介入するケースもある。
「弁護士が介入するのは、退居通告に『従えない』との意思表示をする内容証明郵便の作成などです。また、入居者同士のトラブルで一方的に加害者扱いされている場合などは、合理的な主張で交渉を進めるために弁護士の介入が必要になる場合も考えられます」(同前)