二次相続時に高額な相続税が生じてしまうケースは少なくない(写真:イメージマート)
老後資金を考えるうえで忘れてはならないのが親からの相続問題だ。とりわけ近年は世帯主の没後の「一次相続」では無税でも、遺された親が亡くなった後の「二次相続」で思わぬ税負担を強いられることが少なくない。
一時相続で利用できた特例が使えない
相次ぐ税制改正(増税)により相続税とは無縁だった家庭でも申告や納税が必要になるケースが増えている。相続に関する情報を自身のYouTubeチャンネルで配信する税理士の勝部貴史氏(勝部税理士事務所代表)が語る。
「近年は税制改正に加え不動産の高騰などで相続財産の評価額が想像以上に膨れ上がり、対応を迫られる家庭が少なくありません。特に最近は『二次相続』に関する相談が多く寄せられています」
2015年の相続税制改正では基礎控除額が4割縮小され、課税対象者が全国で倍増。その後も増加傾向にあり、国税庁によると、死亡者数に対する相続税の課税割合は2023年に9.9%と、4年連続で上昇している。
そうしたなか、多くの人が直面する問題としてクローズアップされているのが勝部氏の言う「二次相続」だ。
「平均余命から母が遺されるケースが多く、父の死後の相続(一次相続)では相続税がゼロまたは少額の納税で済んだのに、母の死後の相続(二次相続)では、その子供らに多額の相続税負担が発生する。そんなケースが目立ちます」(勝部税理士・以下「」内同)
なぜそうした事態が起こるのか。
「相続税には配偶者の税額の軽減措置があり、相続財産が1億6000万円までなら配偶者は相続税が課税されません。そのため、一次相続で『相続税がゼロになるから、お母さんにひとまず全財産を相続してもらおう』と済ませてしまうケースがよくあります」
しかし、そうした判断が仇となり、二次相続発生時に高額な相続税が生じてしまうことが少なくないという。
「二次相続での税金が高くなる理由として、まず、一次相続で利用できた配偶者の税額軽減の特例(1億6000万円まで非課税)が使えないことが挙げられます。配偶者自身が亡くなるケースだからです。
次に、一次相続と比べて法定相続人が1人減ることも大きく響きます。両親と子供2人のケースでは、一次相続で基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)が4800万円だったのが、二次相続では4200万円と600万円も下がるからです」