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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】SI Research Memo(2):「時間を与えるソフトウェアを創り続ける」独立系ソフトウェア開発会社(1)

*12:02JST SI Research Memo(2):「時間を与えるソフトウェアを創り続ける」独立系ソフトウェア開発会社(1)
■システムインテグレータ<3826>の事業概要

同社は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社である。「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」をコーポレート・スローガンに掲げ、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)を提供している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」のほかWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」などがある。新製品に関しては基本的にSaaS型での事業展開を志向している。

2022年にベトナムにオフショア開発子会社として設立したKEYSTONE SOLUTIONS COMPANY LIMITED(出資比率83%)を連結対象子会社とし、2025年2月期より連結決算を開始した。また、2025年3月にERP事業の開発体制強化を目的に、生産管理システムの開発・導入支援を行うシステム開発研究所の全株式を324百万円で取得した(他アドバイザリー費用22百万円)。のれんは144百万円(5年均等償却)で連結業績には2026年2月期第2四半期より組み込まれている。主に富士通<6702>の生産管理システム「GLOVIA-smart 製造 PRONES」のソリューションを提供しており、年間売上高は2億円強、営業利益率は10%を超える水準となっている。

さらに2025年5月にはノーコード開発基盤を持つクラウドネイティブの次世代ERP「BizSaaS」の開発・販売を目的とした(株)BizSaaSを富士ソフト(株)と合弁で設立し(出資比率:富士ソフト51%、同社39%、同社代表取締役会長・梅田氏10%)、持分法適用関連会社としている。同社の開発力と富士ソフトの営業力を融合することで中堅・大企業向けの市場開拓を目指す。必要機能は「汎用化して標準機能として取り込む」ことを開発ポリシーとしており、標準機能や各種テンプレートを揃えることで、使い勝手の良いシステムを目指す。PaaSオプションでノーコード開発基盤を提供しており、ユーザー自身が機能を拡充することもできる。現在、同社と富士ソフトのエンジニア、並びに外注先と共同で製品開発を進めており、2026年11月に「BizSaaS」をリリースし5年後の収益化を目標としている。

事業セグメントはObject Browser事業、ERP事業、AI事業の3事業と、新規事業が含まれるその他として区分開示している。2026年2月期中間期の構成比では、ERP事業が売上高の84.0%、セグメント利益の77.8%を占める主力事業となっており、次いでObject Browser事業が売上高で15.4%、セグメント利益で27.6%を占める。AI事業についてはまだ先行投資段階であり、売上規模も小さく収益化前の段階にある。

1. ERP事業
ERP事業では、主にWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」の開発、導入販売を行っている。「GRANDIT」は11社のIT企業が参画したコンソーシアム方式で共同開発・運営されている国産ERPパッケージであり、同社は2004年のコンソーシアム結成時より「GRANDIT」の企画・開発に携わってきた。「GRANDIT」の顧客ターゲットは年商数百億円規模の中堅企業だが、近年では大企業向けも増え、導入実績はコンソーシアム全体で1,500社を超えた。「GRANDIT」の特徴は、完全Webベースで設計されている点にあり、バージョンアップ時にクライアント側でのメンテナンス作業が不要なほか、ハードウェアに依存せずWeb環境があれば場所を問わず利用できる。さらに、コンソーシアムに参画する各社の技術ノウハウが製品開発に反映されており、幅広い業種に対応できる。機能面での競争力も高く、生産管理までカバーできる数少ない国産ERPである。2022年11月には、中小企業向けを対象としたクラウドERPサービス「GRANDIT miraimil(ミライミル)」をリリースするなど、市場適応を続けている。

同社の導入実績は製造業向けを中心に200社超となっており、コンソーシアムの中でトップの実績を有する。同社の強みは、「GRANDIT」の基本機能を補完するアドオンモジュールとして製造業向けの「生産管理アドオンモジュール」や「工事管理アドオンモジュール」のほか、ソフトウェア業界向けに「OBPM Neo」と連携させた「プロジェクト管理テンプレート(ITテンプレート)」などを自社開発するなど、幅広いソリューションに対応できる開発力にある。さらに、RPAやAIと組み合わせた業務自動化提案やAWS、Microsoft Azureなどのパブリッククラウドベースでのインテグレーションサービスにも対応可能である。

ERPの国内市場規模は、コロナ禍を契機とした経営のDX投資の高まりを背景に拡大基調が続いている。業界最大手であるSAPが、既存ERPシステムの保守サポートを2027年度で終了するため、大企業を中心に「SAP S/4HANA」への移行、あるいはほかのERP製品へのリプレース需要が高まっている。こうした市場環境を背景に、同社は2024年4月より「SAP Cloud ERP」の導入支援サービスを開始したほか、2025年1月にSCMパッケージ「mcframe」、同年6月にS&OPソリューション「Streamline」の提供を開始するなど、多様な顧客ニーズに応えるべくサービスラインナップを拡充している。

ERPベンダーは顧客規模別に棲み分けが進んでいる。大企業向けではSAPやOracle<ORCL>など外資系が優勢であり、中堅企業向けでは「GRANDIT」のほか、富士通の「GLOVIA」、オービック<4684>の「OBIC7」などが競合製品となる。近年では多機能化や外部連携機能などによりプロジェクトの難易度も高まっており、中堅企業向けプロジェクトでも1件当たりの受注単価が3~5億円と大型化する傾向にある。売上総利益率は製品構成や仕様によって差異があるが、全体で平均すると20%台後半の水準で推移している。ただし、プロジェクトの長期化や改修作業が生じた場合は、利益率が低下し、不採算プロジェクトとなるリスクも存在する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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