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田代尚機のチャイナ・リサーチ
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【米中貿易戦争の現在地】経済制裁の応酬は米国側にダメージ残し一旦収束 先端半導体の輸入規制に中国は国産化で対抗する方針、AI開発の加速を後押し

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOもAI競争における中国の勝利を予測(Getty Images)

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOもAI競争における中国の勝利を予測(Getty Images)

 中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は9月末以降に激しい応酬が見られた、米中貿易戦争の現在地についてレポートする。

 * * *
 中国商務部、海関総署は11月7日夜、10月9日の公告について、具体的には55号から58号、61号、62号について、2026年11月10日まで暫定的に実施を停止すると発表した。55号から58号は、工具などに使われる超高度材料、一部のレアアース設備と補助原材料、リチウム電池と人造グラファイト陰極材料、一部の中重レアアース製品などに関する輸出管理規制である。61号、62号は、海外において流通する中国産レアアースに関する輸出管理規制、レアアース関連技術に関する輸出管理規制だ。

 その他、米国CHSなど3社の企業に対する大豆の対中輸出を停止する措置、米国産原木の輸入を停止する措置について、11月10日から解除した。

 米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月29日、50%輸出管理ルールと称される「関連者規則」を発表した。エンティティリスト、軍事エンドユーザーリストに関する規制対象を当該企業だけでなく、子会社にも範囲を広げるといった内容で、この措置によって中国企業を中心に29社が新たに対象に加わることになった。

 前述の10月9日の公告はこれに対する中国側の主な報復措置であるが、その実施を1年延期した理由は、米中首脳会談を通して米国側と取引したからである。米国側は50%輸出管理ルールを1年停止、中国の海事、物流、造船業に対する301条調査の実施を1年停止、さらにフェンタニル税を20%から10%引き下げることなどを約束したからだ。

制裁の応酬によるダメージはどちらが大きかったか

 今回の米中首脳会談は、米国側が持ち掛けて実現したことからもわかるように、制裁の応酬は米国側の痛みがより大きかったと言えよう。

 米国にとって厳しかったのは61号である。「海外の組織や個人がレアアース関連製品を中国以外の国地域に輸出する場合、中国商務部から輸出許可証明を得なければならない」とする規制であり、実施は12月1日からとしていた。このレアアース関連製品とは、中国原産の規制対象レアアースを0.1%以上含む海外で製造された製品、中国のレアアース技術を使って海外で生産された製品、中国原産の規制対象レアアース製品などとしている。

 また、最終ユーザーが海外の軍事組織、輸出管理リストなどに記載された組織(子会社などを含む)、最終用途が大量破壊兵器やその運搬手段、テロ、軍事用途(潜在的に軍事力向上に使用される用途を含む)などであれば原則として許可しない。

 さらに、14nm以下のロジックチップ、256層以上のメモリの研究開発、生産、軍事転用の可能性のあるAIの研究開発に使われる場合、個別審査の対象とする。

 米国の政治体制には中国と比べ弱点がある。大統領は独裁者ではない。選挙の度に有権者の審判を受ける。中国はその弱点をよく理解しており、対抗策として打ち出した措置、トランプ大統領の重要な支持基盤である中西部の農業従事者にダメージを与える措置の効果も大きい。

次のページ:中国が長期戦略として進める先端半導体の国産化

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