「人民元の国際化」で注目を集める銘柄とは(写真:イメージマート)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《豪州BHPが中国企業との取引で「人民元決済」を導入することの大きな意味 今後は中国が大豆・レアアースの対米取引で人民元決済を迫る可能性も》を踏まえて、人民元国際決済システムの拡大状況と、そこで恩恵を受ける中国株の個別銘柄について解説する。
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8月におけるSWIFT(国際銀行間通信協会によって提供される決済ネットワークシステム)を通じた各通貨の比率をみると、米ドルが46.94%、ユーロが25.61%、英ポンドが6.76%、日本円が3.37%、カナダドルが2.96%で人民元は第6位で2.93%に過ぎない。中国経済の成長鈍化が影響しているのではないかといった見方もあるが、実体はそれほど単純ではない。
人民日報海外版(10/18)によれば、今年9月末現在、人民元によるグローバルでの取引シェアは8.5%で、2022年と比べ1.5ポイント上昇している。SWIFTを通さない人民元取引が相当数あり、それが順調に拡大しているようだ。
まず、中国国内で決済される取引がある。人民元は中国の法定通貨であり、国内での外貨決済取引についてSWIFTを通す必要はない。また、1万ドル以下の少額のクロスボーダー決済もSWIFTとは無縁だ。中国には世界最大のEC市場があり、最近では海外からの注文も増えている。また、中国人の海外旅行ブームもあって銀聯カードは今やVISA、マスターカードと並ぶ国際クレジットカードと称されるが、ここでの外貨支払いの人民元決済もSWIFTは通されない。
