幕下での全勝優勝が懸かった一番に敗れ、天を仰ぐ炎鵬
十両だった2023年夏場所で脊髄を損傷して途中休場し、その後に7場所連続休場したことで、西序ノ口13枚目まで番付を落とした人気小兵力士の炎鵬。一時は寝たきりの生活を余儀なくされて再起不能と囁かれたが、1年2か月後の2024年名古屋場所で序ノ口の土俵に戻ってくると番付を少しずつ上げてきた。
復帰場所は初戦こそ黒星だったが、その後は6連勝と勝ち越し。西序二段31枚目(6勝1敗)、西三段目56枚目(6勝1敗)、東三段目4枚目(6勝1敗)、西幕下30枚目(6勝1敗)と順調に復活ロードを進んだ。2025年夏場所では全勝なら十両昇進の可能性もある西幕下10枚目まで番付を戻したが、3勝4敗と負け越し。翌名古屋場所では左腓骨剥離骨折で途中休場(2勝2敗3休)に。そこから秋場所(東幕下31枚目=5勝2敗)と九州場所(西幕下17枚目=5勝2敗)を連続で勝ち越して、初場所で再び全勝なら十両昇進の可能性がある東幕下11枚目まで番付を上げていた。相撲担当記者が言う。
「幕内経験者が序ノ口まで落ちて、再び序二段、三段目、幕下と番付を上げて関取に復帰した例はなく、全勝優勝で十両に戻れば史上初の快挙だった」
13日目は東幕下54枚目の延原(二子山部屋)との全勝対決となったが、浴びせ倒しで敗れた。炎鵬は全勝優勝を逃したことで、関取復帰はお預けとなった。
「11日目に栃丸(春日野部屋)との対戦で、渡し込みで勝ったものの左足を負傷してしまった。足を引きずりながら花道を引き上げていた。13日目の延原との対戦では左足首をテーピングで固めて土俵に上がったが、178センチ152キロの巨体に対し、167センチ99キロの炎鵬が踏ん張れずに押しつぶされるかたちとなった」(前出・相撲担当記者)
十両昇進により給料が発生する
この炎鵬が逃した1勝は大きかった。全勝優勝して十両に復帰していれば、幕下以下の力士にはない「月給」を手にできたのだ。幕下以下の力士は本場所ごとに10万円前後の場所手当(各段で違う)と奨励金などがあるだけ。それが十両に昇進すれば毎月110万円の給料が発生する。
加えて、関取になると給料と別に本場所ごとに“持ち給金”に応じた「力士褒賞金」が支払われる。持ち給金は初土俵の3円からスタートして、本場所での成績に応じて加算される。勝ち越し1勝につき0.5円が増え、負け越しても減らない。幕下以下では積み上がるだけで実際には支給されないが、十両に昇進して関取になると「持ち給金の4000倍」の額が力士褒賞金として2か月に1回の本場所ごとに支払われるようになる。
炎鵬は2023年名古屋場所で幕下に陥落した時点で46.5円の持ち給金があった。幕下で5場所連続6勝を挙げるなど給金を増やして初場所は62円に。全勝優勝で十両に復帰していれば65.5円の持ち給金となり、来場所から26万2000円の褒賞金も手にできるはずだった。
さらに、炎鵬が再十両となっていれば、ある権利が取得できていた。現在、炎鵬は関取通算29場所(幕内9場所、十両20場所)で、これが通算30場所になることで年寄名跡を取得して親方として相撲協会に残る条件をクリアできるのだ。
