“商売人トランプ”の政策を元日銀副総裁の岩田一政氏はどう読み解くのか(写真/AFP=時事)
米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が覇権を争う混迷の世界で、日本はいかにして生き残ることができるのか。元日銀副総裁の岩田一政氏が“商売人トランプ”の狙いを戦間期の歴史を振り返りつつ、独自の視点で解説。インタビューを実施したノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。
3人の独裁者がいる世界
――2026年は、米トランプ政権によるベネズエラ攻撃という衝撃の幕開けとなりました。
岩田:大統領を逮捕し連行したことには驚きました。トランプ氏にしてみると、中国が原油関係の資産やレアアースの権益を抑え始めたのが見過ごせなかったのでしょう。
中国はベネズエラに対して600億ドルぐらい融資していて、ベネズエラは原油で支払う関係になっていた。麻薬を口実にしますが、資源獲得競争の側面がある。トランプ氏は商売人なので、儲かるかどうかで方針が傾くこともあるとはいえ、裏には軍事・安全保障の発想があるというのが私の印象です。
元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長
――2025年12月に打ち出した「国家安全保障戦略(NSS)」では、西半球をアメリカの勢力圏とする一方、中国やロシアには不干渉の姿勢を明確にしています。
岩田:トランプさんがうまいなと思うのは、過去の偉大な人のキャッチフレーズを自分流にダイジェストしてしまうところ。今回のNSSは、ほとんどトランプ調だとは思いますが、普通は第5代大統領ジェームズ・モンローが掲げた「モンロー主義」に戻っていると言われる。でも、私は、原形はそれよりも前だと思っていて、アメリカ合衆国の独立宣言の起草者の1人で、初代財務長官のアレクサンダー・ハミルトン(1755~1804)だと思います。
財務長官としてのハミルトンは、関税収入を合衆国の財政収入の基幹に位置づけました。当時の南部は、綿花を中心にした輸出で潤っていて、自由貿易派。これに対してハミルトンは、国の経済をしっかりするには製造業を保護する必要があると唱えた経済的ナショナリストです。
――このところの国際情勢は、ウクライナや中東のガザなど戦争が絶えませんが、大国の自国優先主義による国際秩序の機能不全といった状況が、「戦間期に似ている」とも言われます。長期予測の元祖とされる大正3年(1914年)生まれの大来佐武郎氏の青春期とも重なる。
岩田:当時は世界にはムッソリーニ、スターリン、ヒトラーと3人の独裁者がいて、戦争が絶えない時代。現在も戦争が頻発して、昨年9月には北京に中国の習近平、ロシアのプーチン、北朝鮮の金正恩と3人が揃いましたよね。世界全体が、大来さんが生きた時代に戻っているところがありますね。

