*11:04JST MDNT Research Memo(4):細胞加工業やCDMO事業の各プロジェクトが収益化に向けて進行中
■事業概要
2. 進行中のプロジェクト
(1) 特定細胞加工物製造業
(a) 免疫細胞
メディネット<2370>は、がん免疫細胞治療に用いる治療用の細胞加工を医療機関から受託している。長年の加工実績に基づく品質管理体制を備えている。
(b) S-DSC(毛髪再生)
S-DSCは毛髪再生に関わる細胞加工製品で、資生堂<4911>から技術提供を受けて製造受託を行っている。
品川CPFにおいて、大学病院を含む医療機関4施設から既に受託を開始し、売上を計上している。2026年9月期中間期の加工件数は前年同期を上回り、取引先医療機関の拡大に向けて取り組んでいる。毛髪再生領域は需要が大きく、受託件数の増加が見込まれ、収益機会の拡大が期待される領域である。
(c) ASC(脂肪由来間葉系間質細胞)
ASCはクローン病に伴う複雑痔瘻の治療製品として既に臨床利用されているほか、骨・軟骨に対する疾患、心臓疾患、肝疾患、糖尿病など多様な領域で臨床研究が進む細胞腫である。同社はASCの製造セットアップを完了しており、2026年9月期中の受託開始を目指している。なお、凍結製品の開発変更による遅延に加え、他社での脂肪由来幹細胞治療に関わる事故を受けた安全性確認を進めていることから、収益寄与は2027年9月期以降を見込んでいる。
(d) 3D-DCob(3次元骨様組織)
3D-DCobは、歯科領域における骨造成を目的とした製品で、セルアクシア(株)と共同開発を進めている。インプラント治療前の顎骨骨造成などに用いられ、同社が利用する自己歯肉骨芽細胞由来の細胞製造技術は、安全性と供給安定性を備え、早期の骨再生が期待される。この技術に関する論文は歯科基礎医学会学術集会で発表されており、2026年9月期の臨床研究の開始を目指して準備が進んでいる。歯科領域における再生医療の拡大に向け、同社の新規プロジェクトとして位置付けられている。
(2) CDMO事業
(a) ヤンセンファーマ
同社はヤンセンファーマから再生医療等製品の治験製品の製造を継続的に受託している。2022年に承認を取得した製品の保険収載が近づいており、市販製品の製造受託に向けた協議と体制整備を継続している。
(b) ティーセルヌーヴォー
三重大学発のバイオベンチャー企業であるティーセルヌーヴォーとは、次世代CAR-T細胞療法の治験製品の製造に向けた技術移転を進めており、2026年9月期末の製造開始を予定している。2026年9月期中間期においては技術移転一時金を計上し、CDMO事業の売上増加に寄与した。
(c) AGC
同社はAGC<5201>と戦略的パートナーシップ契約を締結し、細胞治療薬CDMO事業での協業を進めている。AGCは欧米での豊富な商用実績と高い技術力に加え、開発初期から商業化までを支える体制を持つ。同社の細胞加工技術と組み合わせることで、国内外の製薬企業向けに高品質な製造サービスを提供する枠組みの構築を目指している。既に培養技術者の人的協業を開始しており、グローバル承認を見据えた製造体制の強化を図っている。
(3) 再生医療等製品事業
(a) NeoCart(膝軟骨再生)
NeoCartは膝軟骨損傷を対象とし、膝軟骨に近い状態まで培養する自家細胞培養軟骨である。潜在患者数は約14,000人いるが、移植手術が容易で長期の臨床効果が期待されている。米国のOcugen<OCGN>が予定していた第III相試験プロトコルを参考に国内臨床試験の設計を進めていたが、米国側の開発体制の変更により治験開始が遅延し、国内での開発方針の決定も延期されている。
(b) Stempeucel(重症下肢虚血ほか)
Stempeucelは、インドのStempeutics Research Pvt. Ltd.(ステムピューティクス)が創製し、同国で販売承認を取得している細胞治療用製品である。インドでは重症下肢虚血を対象に600例以上の治療実績があり、高い有効性と安全性が確認されているほか、大量製造が可能な点も特徴である。日本では包括的高度慢性下肢虚血を対象疾患としており、潜在患者数は約50,000人と推計される。同社は日本国内での独占的開発・商業化に向け、オプション・ライセンス契約を締結しており、2026年9月期中のオプション権行使可否の判断と治験届提出を目指して(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)※と協議中である。インドでの治療効果が日本人にも同様に得られるか、事業性があるかを規制当局とデータに基づき確認している段階である。
※ 厚生労働省が所管する独立行政法人で、国民の健康や安全を守るために、主に承認審査、安全対策、健康被害救済の3つの業務を「セーフティ・トライアングル」として一体的に担っている。
施設・技術・人材を含む細胞加工体制と実績に競争優位性
3. 特徴と強み
(1) 細胞加工業としての実績
同社は再生・細胞医療分野のパイオニアとして、1999年に免疫細胞治療の総合支援サービスを開始して以来、25年以上にわたり細胞加工業を継続している。累計約20万件の加工実績を持ち、業界内で高い認知と信頼を獲得してきた。また、様々な免疫細胞の加工に対応するなかで、工程開発、品質保証、輸送技術などのノウハウが蓄積され、技術者育成にもつながっている。技術者は技術移転や申請資料作成にも対応できる専門性を備えており、顧客の要求に柔軟に応えられる。これらの実績と体制は他社が短期間で追随することが難しく、先行優位性を確立している。
(2) 顧客との協力関係
同社は医療法人社団滉志会瀬田クリニック東京と長年にわたり緊密な協力関係を構築している。2025年9月期の同クリニック向けの売上は446百万円であり、全体の55.2%を占めている。治療適応や細胞種の検討段階から共同で取り組む密接な関係が特徴である。両者は、ICI(免疫チェックポイント阻害薬)不応例に対する免疫細胞治療に関する臨床研究の論文発表を行っており、得られた臨床データを基に技術の向上を図っている。同社は治療プロセス設計、工程最適化、品質評価など、医療現場に近い形で技術支援を提供している。この協力関係は、新たな治療法や細胞種への展開を可能とする重要な基盤となっている。
(3) 細胞加工体制(施設、技術、人材)
同社の細胞加工体制は、技術力に加え、保有施設での製造許可取得による高い参入障壁を強みとする。品川CPFは、10種類以上の特定細胞加工物と治験製品・承認取得後製品を並行製造できる国内でも数少ない施設である。また、羽田空港に近接した立地は、細胞輸送の効率性と安定性を確保できるという大きな利点がある。同社の設備と品質管理体制は、医薬品医療機器等法及び再生医療等安全確保法の要件を満たしている。同等の体制を新たに構築するには、大規模な設備投資と長年の経験が必要であり、民間企業の参入障壁は高い。また、ヤンセンファーマや資生堂をはじめとする国内外の大手企業からの受託実績は、施設の希少性と信頼性を裏付けるものである。さらに、同社は多様な免疫細胞に加え、S-DSCやASCなど新たな細胞種の受託拡大を進めており、AGCとの戦略的パートナーシップやティーセルヌーヴォーとの技術移転契約につながっている。ヤンセンファーマからの治験製品の製造受託や市販製品の製造受託に向けた体制整備など、製薬企業との取引機会は増加傾向にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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