*15:05JST 巴川コーポ Research Memo(5):モジュール化・部品化・装置化を通じ、さらなる成長を目指す(1)
■第9次中期経営計画について
巴川コーポレーション<3878>は2026年4月1日からの新体制発足に合わせ、2027年3月期を初年度、2029年3月期を最終年度とする3ヶ年の第9次中期経営計画を策定した。各事業における新製品投入及び新市場開拓を柱とする成長戦略を推進するとともに、将来の成長を見据えた設備投資を先行し、2029年4月以降を想定する第10次中期経営計画期間におけるさらなる飛躍を目指す。計画最終年度(2029年3月期)には売上高40,000百万円、営業利益2,000百万円の達成を目標とする。
上方修正が中期経営計画に与える示唆
今回の上方修正は、第9次中期経営計画の評価に無視できない影響を与えている。当初計画では初年度2027年3月期の営業利益10.0億円から最終年度20.0億円へと2年間で倍増させる計画であり、利益成長が計画後半に大きく偏っていた。しかし修正後は初年度で16.0億円を見込み、最終年度目標までの必要成長率は2年間で25.0%程度、目標到達度は初年度にして8割に達する計算となる。
これは計画の実現可能性が大きく高まったことを意味するが、むしろ中期経営計画そのものの増額修正余地が生ずる結果となる可能性が高い。とりわけ、2029年3月期の売上高400億円という目標は修正後の初年度予想386億円との差が14億円(3.5%)に過ぎず、3ヶ年計画の成長目標として説得力を欠く水準となる。中期経営計画において2028年3月期予想が示されていない。これは製紙事業の構造改革に伴う会計処理の不確実性を理由としているようで、同社は2027年3月末を目途に1号抄紙機及び2号抄紙機を停止し、国内での製紙生産から撤退する方針を掲げているが、これに伴う設備の処理費用について現時点で未定であるという点が大きいと見られる。ただし設備そのものの評価損は既に計上済みで、未確定であるのは撤去・処理に係る費用部分である。加えて、製紙関連の売上高も撤退後にどこまで代替・継続するかの対応方針が未定であることも、見通しの公表を見送った理由と見られる。
いずれにしても、今後、第9次中期経営計画の目標値の変更、さらには新製品売上高比率30%やROE5.4%といった質的指標の上方修正が今後の焦点となろう。
第9次中期経営計画の主要課題(8項目)
1) 構造改革の完遂による安定収益の確立
2) 新製品の確実な立ち上げ
3) 独自技術の開発と新分野・新市場への展開
4) 新規市場の開拓と事業部間連携の強化
5) パートナー企業との協業による価値創出
6) DX及びAIの活用による生産性向上
7) 多様な人財が活躍できる仕組みづくり
8) リスク管理の強化
主要課題1) 構造改革の完遂による安定収益の確立
製紙事業は2027年3月末を目途に1号抄紙機及び2号抄紙機を停止し、国内での製紙生産から撤退する(なおインドでの絶縁紙の生産・販売は継続)。祖業である国内製紙からの撤退は長年の構造改革の総仕上げであり、固定費削減による安定収益確立の要となる。トナー事業は世界市場動向を踏まえた収益確保の戦略を強化、ディスプレイ関連事業は製造プロセスの見直しと効率化を進める。2026年3月期には長年営業損失を続けていた製紙事業を含む機能性シート事業で黒字体質が定着、構造改革は着実に成果を上げている。
なお、抄紙機停止に伴う会計処理については、設備の評価損は既に計上済みである一方(2026年3月期に減損損失270百万円、固定資産除却損123百万円を計上)、撤去・処理に係る費用を一括計上とするか複数年度に分割するかは未定としている。また、製紙関連売上の撤退後の取り扱いについても方針が固まっていない。この不確実性が、2028年3月期の業績見通しが中期経営計画において開示されていない主たる理由となっている。処理費用の規模自体は同社の事業規模に対して過大なものではないが、計上時期によっては同の利益水準に相応の影響を及ぼす可能性があり、確定後の開示が待たれる。
主要課題2) 新製品の確実な立ち上げ
2029年3月期に新製品売上高120億円、連結売上高比率30%を目指す(2026年3月期は60億円・17%)。フレキシブル面状ヒーターやグリーンチップ(R) CMF(R)、OLED(有機EL)向け光学フィルム、無機炭素繊維シート(産業用製造装置向け特殊材料)の確実な立ち上げを図る。特に半導体・ディスプレイ関連と機能性シート(グリーンチップ(R) CMF(R)、無機炭素繊維シート)が新製品売上高の中核を担うと見られる。第8次中期経営計画で先行投資を行った案件の多くが2027年3月期以降に収益化する見込みで、それが成長加速の原動力となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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