コンビニ経営で注意しておくべき点とは(イメージ)
50歳で百貨店を辞め、東京・西麻布でコンビニを開業。現在は都心で4店舗を経営する坂本哲郎さん(仮名)だが、当初、本部のマネジャーからは「西麻布やはめたほうがいい」と忠告されていた──。セブン-イレブン・ジャパン本部に30年間勤務し、新刊『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人と店主一家の23年』を上梓した村尾信一氏が、売上だけでは見えないコンビニ経営の難しさを伝える。
※本記事の人物名は仮名で、書籍では著者の経験と取材をもとに、出来事や会話に一部改変を加えている。(文/村尾信一)【コンビニオーナーの奮闘と挑戦・全3回の第1回】
本部は一体何を心配していたのか
「西麻布は、やめた方がいい」
これから加盟しようという人に、コンビニ本部のマネジャーが開店候補地の再考を促す。独立を目指す側からすれば、意外な助言かもしれません。
私の著書で描いた坂本哲郎さんは、長崎の百貨店で外商を担当し、部長まで務めた人です。会社の早期退職者募集を機に、50歳で退職。妻の良子さんと上京しましたが、次の仕事は決まっていませんでした。
営業も部下の教育も経験している。それでも再就職は進まず、3カ月が過ぎ、失業保険も切れかかる。そんなとき、良子さんが見つけたのが、夫婦での加盟を条件とするコンビニオーナーの募集広告でした。
説明会で知ったのは、本部が用意した店舗を使って開業できる仕組みです。土地や建物を自分で用意せずに済む一方、本部に支払うロイヤルティは高く、利益の取り分は小さくなる。坂本さんは、それなら売上を増やせばいいと考えました。
ところが、加盟審査の終盤に自宅を訪ねた地区マネジャーは、坂本さんが希望する西麻布の物件を心配していました。
人通りが多く、売上は見込める。ただし、客が集中する時間帯の忙しさは郊外店とは比べものにならない。地域柄、日中に働く主婦のパートも集めにくい。人が足りなければ、オーナー自身が長時間店に入ることになる。
「場合によっては、ほとんど休めないこともあり得ます」
郊外の住宅街にある物件も検討してはどうか。そう勧められても、坂本さんの意思は変わりませんでした。六本木や広尾にも近く、オフィスもマンションもある。夜には別の客層も動き始める。自分の足で歩き、「売れる店になる」と確信していたのです。
人が足りなければ自分が入る。採用して育てれば、任せられるようになる。百貨店で何人もの部下を育ててきた経験が、その自信を支えていました。
私は30年間コンビニ本部で働き、担当・統括した店舗は2000店を超えます。その経験からも、開業前に確かめるべきなのは、売上の見込みと、それを支える人員体制の両方だと感じます。坂本さんは前者には目を向けていましたが、後者の難しさを、まだ十分には想像できていませんでした。
