コンビニ経営では外国人スタッフとの信頼感も問われる(イメージ)
普段は1日に100個ほど出る揚げ物を、セール初日に1000個売る。本部担当者の提案に、コンビニオーナーは挑戦を決めたが、スタッフには戸惑いもあった──。セブン-イレブン・ジャパン本部に30年間勤務し、新刊『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人と店主一家の23年』を上梓した村尾信一氏が、ある店舗の販売目標をめぐる挑戦と葛藤のエピソードを紹介する。
※本記事の人物名は仮名で、書籍では著者の経験と取材をもとに、出来事や会話に一部改変を加えている。(文/村尾信一)【コンビニオーナーの奮闘と挑戦・全3回の第2回】
目次
コンビニの季節商戦を支えた外国人スタッフたち
クリスマスにはフライドチキンやケーキ、節分には恵方巻。コンビニの店頭に大きなポスターが掲示され、スタッフが声を張って商品を勧める。そんな光景を覚えている方もいるでしょう。かつては、店全体で販売目標を掲げ、季節商品の予約件数を競うこともありました。
その売場を支えてきたのは、日本人だけではありません。共同通信が2024年5月に報じた調査では、コンビニ大手3社で働く外国人アルバイトは8万人超。接客の日本語を学びながら、商品の販売に挑んできた人たちもいます。
私が著書で描いた東京・西麻布のコンビニも、そんな店でした。オーナーの坂本哲郎さんは、50歳で長崎の百貨店を辞めて上京し、妻と開業。人手不足に苦しんだ後、外国人スタッフを育て、2号店の経営を目指すようになります。
ただし、希望すれば出せるわけではありません。私の著書の中で紹介した、本部から示された条件には、売上前年比105%という数字がありました。経費を減らすだけでは達成できず、客数と販売金額をより増やさなければなりません。
担当スーパーバイザー(SV)の武田慎太郎さんに提案された季節商品の予約活動に、坂本さんは力を入れます。そこで娘の美咲さんから問われたのが、こんな言葉でした。
「でも、2号店を出したいのは、お父さんでしょう?」
店のため、スタッフの成長のため。そして、自分が2号店を持つため。どれも嘘ではない。けれど、どれが最優先なのかと問われると、答えに詰まりました。
周辺の住宅への訪問販売は、思うように進みませんでした。その後、地域の清掃や住民との会話を通じ、弁当の配達などの注文が少しずつ入るようになります。それでも、売上目標にはまだ届きません。
