大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

農業革命、産業革命、情報革命の次は? 大前研一氏が考える「21世紀の新しい経済学」を読み解く鍵

「ChatGPT」の登場はAI・ロボット革命の進展をより印象付けた(時事通信フォト)

「ChatGPT」の登場はAI・ロボット革命の進展をより印象付けた(時事通信フォト)

 AI(人工知能)型チャットボット「ChatGPT」の利用者が世界中で急増している。パソコンやスマホを介して、自然言語の質問に即座に「回答」してくれて、論文や記事の執筆、翻訳や要約、さらに複雑な計算やプログラミングまでできてしまう。

 まさに革命的なツールだが、世界的経営コンサルタントで近著『第4の波 大前流「21世紀型経済理論」』が話題の大前研一氏によれば、いま進行しているようなAI革命と今後のサイバー社会の行方については、かつて未来学者アルビン・トフラーが提唱した「波」という概念から解き明かせるという。どういうことか? 大前氏が解説する。

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 私が学長を務めているビジネス・ブレークスルー(BBT)大学・大学院での講義の1つに、「リアルタイム・オンライン・ケーススタディ(RTOCS)」と呼んでいるものがある。これは、企業や国家など様々な組織のマネジメントを研究するために、「もし私が○○○のトップだったらどうするか」と学生たちに課題として与え、最新の状況を踏まえて、まさに「リアルタイム」で経営するシミュレーションを立てていく。

 他の多くの大学・大学院でも、経営学の講義で企業や組織のケーススタディを学んでいる。だが、それらは使い古された過去の研究成果を毎年繰り返し使っていることが多い。たとえば、私が以前聞いたことがある例では、「日産はいかにしてフォードを抜いたか」とか、「富士フイルムとコダックのシェア争いについて」といったテーマもあった。

私が「リアルタイム」にこだわる理由

 そうした講義をしている教授にしてみると、過去の事例とはいえ普遍的な内容が含まれており、毎年新しい学生が入ってくるのだから、同じテーマであってもなんら問題はない、ということらしい。しかし、経営を分析して、次の一手を考える企業経営のケーススタディは、まさにいま現在、起きているケースでなければ意味がない。なぜかと言えば、最近の巨大IT企業の大量解雇を見てもわかるように、たとえばシリコンバレーで誕生したスタートアップ(新興企業)が半年で失速したり、違うビジネスに変貌したりということは往々にして起こり得るからだ。となれば、時間をかけてケーススタディを書き上げても、できた時点でもう役に立たないということになってしまう。

 現在は、ネット検索やSNSを通じて、瞬時にたくさんの情報を入手することが可能だ。BBT大学・大学院の学生たちも、そうやってRTOCSの課題に次々と取り組んでいる。つまり、経済研究や経営分析は「リアルタイム」でやるしかないのだ。

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