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認知症になった配偶者の口座から資金を下ろすには? 「成年後見制度」の仕組みと注意点

「成年後見制度」は2種類

 成年後見制度は、判断能力が十分にある状態で後見契約を結ぶ「任意後見制度」、判断能力が不十分になった状態で契約する「法定後見制度」に大別される。

 これらの制度の大きな違いは、「成年後見人を自身で選任できるか」だ。任意後見制度は自身で成年後見人を選べるが、法定後見制度では家庭裁判所が選任することになる。

 成年後見人に弁護士や司法書士などの第三者が選ばれると、被成年後見人の資産をできる限り維持することが求められる。そのため、株式や不動産の売却などの取引は制限されてしまう可能性もある。加えて、専門家への報酬が発生するため、せっかく貯めた老後資金が本来の目的に使えなくなることも懸念される。

 任意後見制度を利用した場合も、原則として取引制限や報酬が発生する。だが、任意後見契約で定めた範囲内であれば、株式や不動産の取引ができるので、大きな問題にはならないだろう。なお、成年後見監督人への報酬が発生するが、法定後見制度より負担額が少ない傾向にある。

 また、法定後見制度の問題点には、手続き完了までに4か月程度かかることも挙げられる。手続きが完了するまで銀行預金が引き出せない状況が続くため、生活が苦しくなってしまうリスクがある。そのような状況を避けるためにも、任意後見制度の利用を検討しておくべきだろう。

認知症になったら「任意後見制度」は使えない

 任意後見制度では活用できる資産の自由度が高まるだけでなく、報酬などの金銭的な負担も軽減される。だが、本人に判断能力が十分にある状態でなければ、任意後見制度が利用できないので、認知症になる前から準備を進めておかなければならない。

 認知症に対する不安を感じているのであれば、手遅れになる前に任意後見制度の活用を検討しておくべきだろう。認知症が進行している場合は、老後資金が引き出せない状況を避けるためにも、可能な限り早く法定後見人制度の手続きを始めておくことが重要だ。(了)

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