大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

世界はAI・スマホ社会の「第4の波」へ 一方で「日本は第3の波で足踏み中」と大前研一氏指摘

第4の波で世界が向かうAI・スマホ社会に「国境」はない(イメージ)

第4の波で世界が向かうAI・スマホ社会に「国境」はない(イメージ)

 現在のAI(人工知能)革命は、かつて未来学者のアルビン・トフラーが提唱した農業革命=「第1の波」、産業革命=「第2の波」、情報革命=「第3の波」に続く「第4の波」である──これが、世界的経営コンサルタントの大前研一氏による最新潮流分析だ。果たして、この新たな革命は、「第3の波」とどう違うのか? 近著『第4の波』が話題の大前氏が解説する。

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 トフラー氏の「第3の波」と、いま広がりつつある「第4の波」は、何が違うのか? 「第3の波」は情報革命によって工業化社会からIT社会に移行した。次の「第4の波」は、IT社会よりさらに進んだサイバー社会=AI・スマホ社会であり、その違いは劇的なものだ(図を参照)。

【図】人類社会は「IT社会」から「サイバー社会」へ移行しつつある

【図】人類社会は「IT社会」から「サイバー社会」へ移行しつつある

日本の生産性が上がらない理由

「第3の波」の前半では、データ入力業務やコールセンターのオペレーターに加え、コンピューターの導入によって高度化した経理、総務、購買などの事務処理を担う間接業務のホワイトカラーが大勢必要になり、大量の雇用が創出された。

 そして後半では、営業支援や受注管理、在庫管理、請求管理といった定型的な間接業務の分野で様々なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション=ロボットによる業務自動化)ツールが登場し、これを活用して徹底的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を実行すれば、間接業務のホワイトカラーの人数はこれまでの5分の1から10分の1で事足りるようになった。たとえば、世界最大のコンピューターネットワーク機器開発会社・シスコシステムズは、全世界5万人分の出張旅費精算をわずか数人で処理しているという。また、インドや中国などアジアの新興企業は最初からRPAツールを使っているから、もともと間接業務の効率は極めて高い。その結果、欧米企業やアジアの一部の企業は労働生産性が飛躍的に上がった。

 一方、日本は「第3の波」の後半にも入っていない。日本企業の大半はRPAツールを使い切れていないため、労働生産性が低いままである。人員が余ったらリストラするか、営業職に回すのが常識である。だが、終身雇用制度が慣行となっている日本企業の場合、簡単にリストラすることはできない。また、入社以来、経理や総務などの間接業務しかやってこなかったホワイトカラーは営業を嫌がるので、職種転換も非常に難しい。だからRPAツールが山ほどあるにもかかわらず、日本企業は導入に二の足を踏んだり、導入しても使い方が中途半端だったりして、労働生産性が一向に上がらないのだ。世界中で普及しているRPAツールも「日本語」のハンディがあるため、日本ではまだ十分に消化できていないのが実情だ。

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