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【実録税務調査】「そんな昔の話、覚えてるわけないやろ!」 国税調査官が絶対に見逃さない口調の変化

「もう一回お尋ねしますけど、この請求書ってどんな取引だったんですかねぇ」

 調査官である私は、たいてい答えられないであろうことについて質問を投げかけているのです。

「そんな何年も前の話、覚えてるわけないやろ!」

 私の質問に答えられなくなった経営者は思わずそう口にしてしまうことがあります。午前中なめらかな口調で話していたのとは明らかにトーンが変わっています。調査を進める中で不正につながる事実をつかみかけたとき、その都度、確認をします。行政に対する不満を勢いよく話されていたときのトーンと、まだすべてを語らず隠している部分がある場合の口調は必ず違うのです。事実関係を詳しく聞き、矛盾を解明していけば、言葉を荒らげなくても、調査は進みます。

「そうですか。では、請求書の前の段階である見積書やメモを見たら、どんな内容だったのかわかるかもしれませんね。もしかすると、この部屋の中に思い出すきっかけになるものがあるかもしれないので一緒に探しましょう」

 請求書などの書類を作成するに至るまでの書類のことを「原始記録」と言います。私は、経営者が覚えていないと言われるので、その手がかりである原始記録を探すために「現況調査」を始めることになるのです。

 現況調査は「ガサ」と言われることもあります。ガサガサとオフィスや家の中を探しまることです。現況調査をすると何年か前に辞めてしまった社員の認印やかつて取引のあった会社の名刺など、帳面にはあがっていないものがどんどん出てきます。「何年も前のことを覚えているわけがない」と言われたので、現況調査をするしかなくなるわけです。

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