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三菱デリカミニ、大人気の理由は「デザインと車名」だけじゃない “軽乗用車の粋”を超えた本格的4WDの走り

 こうして誕生したスーパーハイトワゴンの「デリカミニ」は、発売開始前にはすでに1万6000台もの予約注文があり、発表後もその勢いはとどまることがないようです。さらに2WDより、イメージどおり力強いターボエンジン仕様の、4WDがもっとも多くなっています。通常、こうした軽自動車の構成比で見ると燃費の良さを考慮するユーザーが多く、4WDを選択するのは2割程度の比率になるというもの。それがアウトドアでの使い勝手のいい4WDが6割を越えているのですから、まさに異例。三菱の狙いはピタリと当たったわけです。

「ひとクラス上の快適さ」を感じさせる走り

 当然ながら4WDモデルの走りがとても気になり、オフロードに強いといわれる三菱ならではの自慢の足をチェックしたいところですが、まずは日常的な使い勝手です。ドライバーズシートに座ると、見える景色はeKクロススペースのまま。デザインもほとんど変わっていないのですが、走り出してすぐに感じたのはユニフォミティ、つまりタイヤの均一性でした。本来はタイヤが転がることを意識する機会は、ほとんどないかもしれません。転がって当たり前、ホイールバランスが取れていなかったり、タイヤのトレッド面が波打っているなど、いわゆる重大なるトラブル事案があるとき以外、タイヤの真円性を意識することはないと思います。

 一方で、まさに真円のような高度な感覚を実現してスムーズに転がっている場合は、本当に心地よくタイヤの回転が体に伝わってくるものなのですが、実際にデリカミニで走ってみると、その感覚があったのです。正直に言えば他の軽自動車ではほとんど感じたことのなかった気持ち良さです。これも4WDには15インチという軽自動車にとっては大径のタイヤを装着し、さらにサスペンションにも専用のチューニングを施した結果のあらわれだと思います。伝統的に三菱車には「乗り心地の良さ」が備わっているのですが、デリカミニにもその伝統が生きていると感じました。

 そんな心地よさが見せる市街地や郊外路の走りは、本当に心地よく、疲労感の軽減に寄与してくれることは容易に想像できます。高速に乗り込めばその思いはよりいっそう強くなって、キャンプサイトまでの行き帰りは快適なものになるはずです。

 そしてキャンプサイトまで未舗装路へと入り込むと、これがサスペンションのストローク感をしっかりと活かした乗り味を披露してくれます。唯一、今回のルートには、道なき道のような場面はなかったのですが、仮にそんな状況になってもなんとか対応してくれるだろうということはわかります。なによりテストコースで念入りに徹底して仕上げたという4WDのチューニングは、期待に違わない仕上がりになっているはず。雪道のシーズンになったら改めてチェックしてみたいという期待感を抱かせてくれるのです。

リアバンパー、リアガーニッシュ、ホイールアーチなどで力強さを表現している

リアバンパー、リアガーニッシュ、ホイールアーチなどで力強さを表現している

 こうしてたどり着いたキャンプサイト。そのシーンでのハマり具合はどうでしょう。街では可愛らしさが少々勝っていましたが、自然の中ではちょっぴり頼もしく、さらにちょっぴりアクティブで、そしてちょっぴりやんちゃそうに見えて、なんともカッコいいのです。野山を自在に駆けまわる愛犬のような可愛らしさがあります。デリカミニにとってデザインと車名が強力な武器になったと述べましたが、走りでも十分にその実力の高さを証明してくれました。もしアウトドア使いやスノードライブを多く楽しもうというなら、やはりこの4WDのパフォーマンスの高さは大きな魅力になるはずです。

 そんな満足感の余韻を楽しみながら森の中に佇むデリカミニを眺めているとき、不意にあることを思い出しました。あのテレビコマーシャルなどで人気になっているイメージキャラクターの「デリ丸。」ですが、どうやら「犬」ではないのです。公表されているプロフィールによれば「“デリ丸。”はデリカミニの化身(犬かどうかは不明です)」となっているのです。ではいったい何なのでしょうか? 最後の最後になって、このプロフィールが気になってしまいました。

【三菱デリカミニ T Premium・4WD】
価格:223万8500円(税込み)
全長×全幅×全高=3395×1,475×1,830mm
最小回転半径:4.9m
最低地上高:160mm
車重:1,060kg
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:4WD
エンジン:直列3気筒インタークーラーターボ 659cc
最高出力:47kW(64PS)/5,600rpm
最大トルク:100Nm(10.2kgf・m)/2,400~4,000rpm
燃費:17.5km/l(WLTCモード)
モーター:交流同期電動機
最高出力:2.0kW(2.7PS)/1,200rpm
最大トルク:40Nm(4.1kgf・m)/100rpm

【プロフィール】
佐藤篤司(さとう・あつし)/自動車ライター。男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

リアバンパー、リアガーニッシュ、ホイールアーチなどで力強さを表現している

リアバンパー、リアガーニッシュ、ホイールアーチなどで力強さを表現している

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