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【岸田政権が目論む「サラリーマン増税」】政府税調「控除が手厚すぎる」の答申に怒りの声「どれだけ天引きされていると思ってるんだ!」

給与明細を見ないと気づかない「わかりにくい増税」

 本当にサラリーマンが税負担において恵まれているのだろうか? その指摘に首を傾げる向きは少なくない。ベテラン社会保険労務士はこう言う。

「サラリーマンの給料は、税金や社会保険料が天引きされた額が会社から振り込まれる。つまり、収入がガラス張りになっているわけです。税務署による所得の捕捉率を表現した“クロヨン”というフレーズがありますが、給与所得者(サラリーマン)は補足率9割、自営業者は同6割、農業だと同4割といわれています。そうしてサラリーマンは収入を誤魔化すことができずに、きっちり天引きされているのだから、“手厚い”“恵まれている”と言われてもその実感はないでしょう。

 しかも、今回の答申にもある“働き方による不公平を見直す”という理屈で、給与所得控除はすでにどんどん削られています。2012年の税制改正では給与所得控除に245万円という上限が設けられ、それが2014年から段階的に220万円まで引き下げられた。その後、基礎控除の引き上げなどはあったものの、現在の給与所得控除の上限は195万円まで下がっています」

 控除が削られるのは事実上の増税だが、サラリーマンは毎月の給与からの源泉徴収となっているため、給与明細をよく見ていない人が多ければ、怒りの声は広がりにくい。そうした構造があるためか、天引きの額はどんどん増えている。サラリーマンが加入する厚生年金の保険料率は2004年の13.58%(労使折半)から段階的に引き上げられて、2017年には18.3%(同)に達した。都内の40代男性会社員はこう話す。

「たまに給与明細をきちんと見ると、ため息をついてしまいます。税金も社会保険料もなんでこんなに引かれているんだと。それでいて、サラリーマンの控除は手厚いなんて言われると、“どれだけ天引きされていると思っているんだ!”と怒鳴りたくもなる。うちは高校生の子供がいるので、少子化対策で高校生にも児童手当が支給されるという話で一瞬喜んだのですが、その代わりに扶養控除(16~18歳)の廃止を検討しているというニュースを見て、心底がっかりしました」

 消費税率の引き上げが買い物のたびに実感の沸く「わかりやすい増税」なのに比べて、サラリーマンの控除を削るというやり方だと毎月の給与振込を細かくチェックする人以外には気づかれにくい。岸田文雄首相は「向こう10年間、消費税は増税しない」と明言する一方で、控除カットという「わかりにくい増税」を進めようとしているということなのか。政府税調の答申を受け取った岸田首相は「税制の検討をさらに進める」と述べたが、それは真に国民のための検討でなければならない。(了)

>次ページは、1970年度~2023年度までの税+社会保険料の「国民負担率」の推移

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