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【鉄道のふしぎ】中空の「架線」がジグザグに張られているのはなぜ? パンタグラフの構造をもとに解説

 パンタグラフは、電車の屋根上に設ける集電装置の一種で、架線と接触して電気を取り込む役目を果たしています。電車が動くために必要な部品の一つです。

 パンタグラフは、最上部にあるすり板を架線に対して垂直方向に押し上げる構造になっています。すり板は、架線と接触する板状の部品です。

 すり板は、長く使うとすり減る消耗品です。電車が走っているときは絶えず架線とこすれながら接触するので、長時間使うと摩耗します。

すり板の摩耗

 もし線路の直線区間で架線がまっすぐに張ってあったならば、すり板の一部だけが摩耗するはずです。しかし、実際はそうはなりません。それは、線路に曲線区間(カーブ)があるだけでなく、直線区間における架線の張り方を工夫しているからです。

すり減ったすり板。つくばエクスプレス総合基地一般公開時に撮影

すり減ったすり板。つくばエクスプレス総合基地一般公開時に撮影

 上の写真をご覧ください。これは、つくばエクスプレスの電車で使われたすり板の実物です。厚さは均一ではありませんが、全体的にすり減っています。

 すり板は、定期的に点検し、規定の厚さになると交換します。写真は、交換で取り外されたものです。

 なお、すり板は、パンタグラフの中央部分(線路の軌道中心)に対して左右別々に固定してあります。写真に「右に行くほど厚さが薄くなっている」と書いてあるのは、すり板の右端(パンタグラフの中央部分)が一番摩耗していることを意味します。

 このようにすり板が全体的にすり減るのは、先ほど述べたように、直線区間における架線の張り方を工夫しているからです。

架線をジグザグに張ると

 その工夫が、架線を左右方向にジグザグになるように張ることです。このような架線を、鉄道では「千鳥架線」と呼びます。

新幹線のパンタグラフと架線の関係。直線区間で架線をジグザグに張ると、すり板全体(左右それぞれ)にまんべんなく当たる

新幹線のパンタグラフと架線の関係。直線区間で架線をジグザグに張ると、すり板全体(左右それぞれ)にまんべんなく当たる

 上の図は、新幹線のパンタグラフと架線の関係を示しています。この図ではわかりやすくするため、架線のジグザグを意図的に強調しています。

 架線をジグザグに張ると、すり板全体(左右それぞれ)に架線が接触するため、すり板の摩耗する部分が左右方向に分散します。このため、すり板は薄くなりにくくなり、長持ちします。

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