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【大都市でも進む公立高校の統廃合】過半数の市区町村で「ゼロまたは1校」に 通学可能範囲に学校がない、教育の質が保てなくなるなどの弊害

入試の合格点を下げないと定員を満たせない高校も

 さらに懸念されるのは、年間出生数がこの数年間で急降下している点だ。厚生労働省の人口動態統計によれば、2015年は100万5721人だったが、2022年は77万759人だ。わずか7年で23.4%も減っている。

 出生数の回復が見込めるかといえば、日本の出生数減の根本原因が「母親の不足」にある以上、長期にわたって難しい。ちなみに、厚労省の人口動態統計速報値によれば、外国人を含む2023年1~9月の出生数は前年同期比5.0%減となっており、2023年の日本人の年間出生数は73万人程度となりそうだ。

 出生数の急降下は受験マーケットを短期間で縮小させ、学校経営に大きな影響を与える。例えば入試だ。トップクラスの人気進学校は別として、中堅レベル以下の高校では合格点を下げないと入学定員を満たせないところが増え、志願者が定員を下回る高校も年々拡大しよう。

 通学圏内の高校に合格できないと遠距離通学や「下宿」となる過疎地域の事例を先に紹介したが、こうしたエリアの高校教員からは「学力が余程低くないかぎりは不合格としづらい。実質的に入学試験が困難になりつつある」との本音も聞こえてくる。入学者の学力差が広がることになれば、高校全体の授業に影響する。

 問題は入試だけでない。こうした15歳人口の減少見通しを無視し、現時点で教員不足が深刻化しているからといって採用数を増やしたり、教室や設備を拡充したりすれば、遠からず余剰となりかねない。

後編〈【子育て支援弱い地方で高校消滅加速?】 親世代は東京圏に集中、生き残る鍵は全寮制や通信制へのシフトか〉に続く

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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