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【大河ドラマが10倍面白くなる】紫式部の父・藤原為時はなぜ「式部丞」職にこだわったのか?「平安貴族の就職事情」を探る

『紫式部日記絵巻(模本)』より。出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

『紫式部日記絵巻(模本)』より。出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』がスタートした。藤原氏を中心とする国風文化が花開いた「平安時代中期」が舞台で、「女性が主人公」という大河としては異例づくめの本作だが、今後1年、どんな物語が展開されるのか。歴史作家の島崎晋氏は、初回の放送で描かれた主人公・まひろ(のちの紫式部)の父である藤原為時の「就職活動」に注目。知れば大河ドラマが10倍面白くなる、「平安貴族の就職事情」を解説する。(以下、第1回の内容を含みます)

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『光る君へ』の第1回「約束の月」(1月7日放送)は、関東地区の平均世帯視聴率が12.7%(ビデオリサーチ調べ)と、「歴代ワーストを記録した」と報じられた。しかしこの数字にはBSや録画、見逃し配信等の視聴者が含まれないうえ、そもそも視聴率と視聴者の満足度や作品の出来が比例関係にあるとは限らない。

 ドラマ第1回は陰陽師の安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が夜空を眺め、凶事の兆しを見て取ったところに始まり、主人公のまひろ(のちの紫式部)が藤原道兼(道長の次兄。玉置玲央)に刺殺された母・ちやは(国仲涼子)の遺体を前に泣き崩れる場面で終わった。

 ときにまひろの父・藤原為時(岸谷五朗)は右大臣・藤原兼家(段田安則)の口利きで、東宮(のちの花山天皇)の教育係になったばかり。立場上、兼家を敵にまわすことができないため、ちやはの死を病死と偽ることを、まひろにも従者にも言い渡した。

 それまでの5年間、官位はあっても職にありつけず、困窮を強いられていたことを考慮すれば、為時にも同情の余地はある。だがそれにしても、同じ藤原氏でありながら、兼家一族と為時では境遇が違いすぎる。時代背景に不案内な視聴者は混乱を来しているかもしれないから、少し補足をしておきたい。

為時と兼家…同じ藤原姓で境遇が全く違う理由

 そもそも藤原氏は645年の乙巳の変(いっしのへん)に参画した中臣鎌足が、天智天皇から「藤原」の姓を授かったことに始まり、鎌足の孫の代以降、藤原南家、北家、式家、京家の4家に分かれた。

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