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「もう無理だ!」から一転、人手不足に苦しむ清掃業者が「30か国120人」の外国人を雇用し問題解決 疲弊する現場を変えた「いつでも誰でも働ける仕組み」

業務の管理には独自開発したアプリも活用

業務の管理には独自開発したアプリも活用

 各業界で人手不足が叫ばれている。人口減少と高齢化の進展が見込まれ、労働力人口・就業者数は毎年50万人規模で減少していくとする推計もある。働き手としての外国人に期待する声もあるが、言語・文化の異なる外国人の雇用は容易ではない。

 そうしたなか、専用のアプリをゼロから作成し、外国籍スタッフを多数活用することに成功した清掃業者「ハステック」(東京都渋谷区)が注目されている。同社代表取締役社長の田島太郎氏に聞いた。

「不動産会社から始まり、今は清掃やビルメンテナンスを中心とした事業を展開しています。我々の業界も、深刻な人手不足です。事業を拡大したいけど、やればやるだけ現場は疲弊していく状態が続いていました」

 仕事はあるのに人がいない。ある日、オフィスで事件が起こったという。

「夜遅い時間だったのですが、清掃スタッフのシフトを管理していた社員がパソコンの前で“もう無理だ”って大声で騒ぎ始めたんです。驚いて聞いてみると、複数の現場で欠員が出て、どうにも身動きが取れなくなっているとのことでした。それが常態化していたといい、その夜に感情が爆発してしまったそうです」(田島氏)

シフト作成、清掃方法の指導は「人力だと限界」

 その時は社員全員が現場にヘルプに入ることで何とか事なきを得たというが、「このままではいつか破綻する」と田島氏は強く感じた。

「業界の先輩方に相談しても、“大変だよね、でもやるしかないんだよ”と、根性論で押してくる。それじゃだめだ。抜本的に変えていかないと業界に未来はないと思いました」

 幸い当時、コロナ禍に始めた消毒事業が成功し、会社には「瞬間風速的な黒字」(田島氏)があった。これをすべてつぎ込んで業務のIT化を進めることにした。

「それまでの清掃業はシフト作成や清掃方法の指導などを人力で行なうのが一般的でした。しかし、それには限界があります。仕事の内容はそれぞれの現場によって異なるし、働き手は隙間時間を有効利用したい人が多いため、急なシフト変更や欠席なども頻発します。これら大量の情報を処理するにはITを活用したほうがいい。そこでアプリ作りに乗り出しました」(同前)

 そうして2年前に誕生したのが、ハステックの独自アプリ「オタスケクルー」だ。田島氏の頭の中には「いつでも誰でも働ける仕組み」というキーワードがあった。「誰でも」には当然外国人も含まれる。

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