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「政治とカネ」問題は政治資金の流れの“デジタル化”で即解決 それでも政治家のオンライン申請率「わずか5.7%」の絶望感

「努力義務」でなく「義務」にすればよい

 そもそも政治献金に関しては不可解なルールが実に多い。

 たとえば、個人が政党に寄付できる総額は年間2000万円以内、個人が同一の政治団体に寄付できる総額は同150万円以内に限られ、献金者の名前、住所、金額、職業などを政治資金収支報告書に記載して開示しなければならない。

 だが、年間5万円以下の寄付者、20万円以下の政治資金パーティー券の購入者(パーティーごと)は、名前を政治資金収支報告書に記載する必要がない。ということは、それが裏金になっていたとしても献金者はわからないわけだ。

 実際、政治資金規正法違反の疑いで逮捕された安倍派の元文部科学副大臣・池田佳隆容疑者は、20万円以下のパーティー券購入者の「匿名性」を悪用し、毎年多額の裏金を捻出していたとみられている。

 実は私も1994年に創設した政策学校「一新塾」出身の政治家や見どころがあると思った国会議員らに毎年、銀行口座から自動振り込みで献金してきた。

 いつまで経っても誰1人として私が提案している政策の実現に努力してくれないので、アホらしくなって2022年にやめたが、政治献金を“証拠”が残る口座振り込みに限定し、政治資金の申請・届出オンラインシステムを「努力義務」ではなく「義務」にすれば、電子化=透明化はすぐにできるはずだ。

 本来なら今回の問題を奇貨として膿を出し切り、政治に対する国民の信頼を回復すべきである。しかし、岸田首相に本気で「政治刷新」を断行する決意と覚悟があるとは思えない。おそらく政治刷新本部がぬるい再発防止策を出してお茶を濁し、早々に幕引きとなるだろう。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2024年2月9・16日号

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