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「このままでは米国のIT植民地になる」モバイル苦戦の楽天・三木谷浩史氏が募らせる日本の携帯事業への危機感

2022年、楽天モバイルの記者発表会に登壇した三木谷氏(時事通信フォト)

2022年、楽天モバイルの記者発表会に登壇した三木谷氏(時事通信フォト)

 楽天グループが5月に発表した2024年1~3月期の連結決算は最終損益423億円の赤字と、同期間としては5年連続の赤字だった。業績の重荷になっているのは、2019年に参入した携帯キャリア事業だ。なぜ楽天を率いる三木谷浩史氏は、高いリスクを承知で同事業に参入したのか。そこには三木谷氏の世の中、そして日本に対する危機感があった。大きなリスクと挑戦の深層を氏の最新著書『成功の法則100ヶ条』(幻冬舎)から読み解いてみる。

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 この15年間の変化とはどのようなものだったのか。

 楽天グループにとっての最も大きな変化を挙げるとすれば、これまで通信事業者大手3社による寡占状態にあった携帯キャリア事業への参入を果たしたことだろう。

 AppleがiPhoneを発表した2007年以来、スマートフォンは急速な広がりを見せてきた。さらに、2022年には生成AIが普及し始め、僕たちの生きる世界に構造的な変革を起こした。実際に目に見えている社会とは別の次元に、本当の意味での仮想社会が出現し、日々刻々と急速な成長を続けている、と言えばいいだろうか。

 その「変化」が楽天グループの展開するECや金融のビジネスのあり方はもちろん、メディアのあり方を変えたことは誰もが経験している事実だ。今やスマートフォンは電話であり、カメラやビデオであり、百科事典であり、財布であり、ゲーム機でもあり、人類にとって世界への窓口そのものとなった。

 もし現代を生きる若者に、「スマートフォンと車のどちらかを選べ」と聞けば、ほとんどの人が前者を選ぶのではないだろうか。スマートフォンとインターネットの組み合わせによって、僕たちは24時間どこにいても、オンラインでつながっていられるようになった。

 それがこの15年間の最大の変化である。

 そんな中、僕が2017年に決断したのが携帯キャリア事業への参入だった。そのとき大きなリスクを取ったのは、誰もが安価で高速なネットワークに接続できる未来が、日本という国のこれからにとって、何よりも重要なファクターだという思いがあったからだ。

 スマートフォンの普及によって、携帯キャリア事業の意味合いは大きく変わった。モバイルネットワークが道路だとすれば、その道路自体がインテリジェンスを持つほどに技術が進歩したからである。

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