執行役員就任後の清三氏については、社内からこんな声が聞かれた。
「今年5月、サントリーグループのブレンダー10人でウイスキーの本場スコットランドへ赴き、海外のブレンダーの人たちと勉強会を開いたそうです。その際も清三さんが乾杯の際の挨拶をされたと聞いています。役員になってからは社内報に登場する機会が目立っています」(別の男性社員)
清三氏がいたウイスキー事業部に接点のある社員は飲み会で一緒になったことがあると明かす。
「気取ったところがなくて、すごくイイ人。もちろんウイスキーの知識もすごく豊富だし、さすが佐治家でお父様が著名な音楽家なこともあって文化的な教養がある。飲み会に参加すれば他の社員と肩を組んで盛り上がることもあります」
接点のない社員たちは清三氏の今後についてどう見ているのか。前出・40代社員が言う。
「社内に鳥井姓の方は何人かいますが、佐治姓の方は会長以外で初めて見た。清三という名前を見て、『(2代目の)敬三さんを意識した命名なのかな?』という会話もありました(笑)。まだまだ先の話でしょうが、社長になるかもしれない人とは思っています」
サントリーHD広報部に「佐治清三氏は将来のトップ候補のひとりか」と訊ねると、「今後について決まっていることはございません」と回答。
サントリーに限らず近年、日本の大手企業のトップ人事をめぐっては、「創業家回帰」の動きも見られる。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「老舗企業はだんだんと創業家離れが進むのが普通ですが、日本のトップ企業に限っては“創業家への大政奉還”の動きが目立ちます。経営環境が激変するなか、世界と戦うために創業家のブランド力や、強い求心力が必要とされる局面が増えているからではないか」
※週刊ポスト2024年7月19・26日号