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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

政府・経団連が進める“なし崩し”の原発再稼働でいいのか 大前研一氏が考える「今後の莫大な電力需要に備える」ための方策

今後の莫大な電力需要をどう賄うか(イラスト/井川泰年)

今後の莫大な電力需要をどう賄うか(イラスト/井川泰年)

 アメリカでは生成AI(人工知能)の急速な普及で電力需要が逼迫。温室効果ガスを出さない原子力発電所による電力調達が注目され、日本でも原発再稼働の検討が進められている。そうしたなかで「“なし崩し”の原発再稼働」に反対するのは経営コンサルタントの大前研一氏。元原子炉設計者でもある大前氏が、日本の原発事情とこれからの電力需要の補い方について提言する。

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 電力需要の急増に対応するため、原発再稼働の動きが徐々に加速している。岸田文雄前首相が原発再稼働に舵を切り、再稼働慎重派だった石破茂首相も所信表明演説で「AI時代の電力需要の激増も踏まえつつ、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を抜本的に高めるため」として「安全を大前提とした原子力発電の利活用」に言及した。

 実際、宮城県の女川原発2号機は10月29日に再稼働し(編集部注:11月4日に停止)、島根原発2号機も12月に再稼働する予定だ。元日の能登半島地震で影響を受けて再稼働は難しいと思われた柏崎刈羽原発も、9月に資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が自民党新潟県連の党議に出席して原発事故発生時の国の対応方針について説明するなど、再稼働に向けた布石を着々と打っている。経団連も「原子力の最大限の活用」を石破政権に強く求めている。

 だが、私は本連載や著書『原発再稼働「最後の条件」』で、日立製作所の元原子炉設計者として“なし崩し”の再稼働には反対してきた。政府も原子力規制委員会も電力会社も、真摯に福島第一原発事故の総括・反省を行なわず、その教訓に何も学んでいないと言わざるを得ないからだ。

 現在、東京電力は福島第一原発の燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の試験的取り出しを進めている。段階的に拡大して廃炉作業を進める計画だが、燃料デブリは800トンもあるから、他所には持っていきようがない。福島第一原発は国が地元の大熊町と双葉町から土地を買収し、チェルノブイリ原発のように原子炉をコンクリートの建物で覆って「石棺化」し、そのまま永久に放射性物質を閉じ込めておくしかないのである。

 日本の場合、もはや原発の新増設やリプレース(建て替え)は無理だろう。政府は原子炉の運転期間を30年から40年に延長し、さらに原子力規制委の認可を受ければ1回に限り60年まで延長できるようにしたが、その寿命が来たら順次廃炉にして「原発ゼロ」に向かうしかないと思う。

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