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【注目銘柄】日立製作所:強い事業基盤を活かせられるDX・AI関連銘柄

日立製作所(6501):市場平均予想(単位:百万円)

日立製作所(6501):市場平均予想(単位:百万円)

企業概要

 日立製作所(6501)は、モノづくり企業からDX企業へ変貌を遂げた国内最大の総合電機・重電メーカーです。

 かつては電気シェーバーから電車や原子力まで非常に幅広く展開するコングロマリットでしたが、この15年程で脱炭素、デジタル分野を中心とする事業体へ生まれ変わったことで、注目を浴びています。

 事業構造の変革が始まったのは2009年3月期。リーマンショックの影響で7,800億円という巨額の最終赤字を計上したことで、経営危機に陥ったのがキッカケです。この危機を受け、同社は需要減退のなかでも安定収益を確保できる事業体への変化を目指します。注力を決めたのは、「社会イノベーション事業」への集中でした。「社会インフラの制御・運用と高度な情報技術(IT)の両方を有している」ことを武器にできると見たからで、同社はこの分野で「世界のビジネスで戦える企業」となることを誓いました。

 早速2009年7月には上場子会社5社を完全子会社化(資金は増資で調達)、また赤字事業からの撤退も決定しました。この戦略は実を結んで2011年3月期には最終黒字に回復し、またコスト構造改革も利益改善を促して2012年3月期には過去最高益(当時)を計上するまでになっていきました。

 以降、2016年から事業再編は活発化し、20社超が売却・非連結化されました。これには「日立御三家」とされた日立化成、日立電線、日立金属、「新御三家」に数えられた日立キャピタル、日立マクセルが含まれるほか、日立建機や海外家電事業も含まれます。最近では7月にも家庭用エアコンの開発・製造からの撤退(空調合弁会社を独ボッシュに売却)が発表されました。

 長年に渡って成長を支えてきた会社が整理されていることから、変わる時代のトレンドに沿った事業体になろうとしていることが伝わってきます。デジタル化時代なので、同社の事業再編は、デジタル化との親和性の高さも重要な指標となっていると思われます。

 一方、社会インフラ関連やDX支援など成長が見込める事業に経営資源を集中させ、例えば日立ハイテクなどルマーダ(後述)と親和性が高い会社は完全子会社化したり合併しています。この分野では大規模買収も複数行い、事業拡大を強力に後押ししています。

 2018年スイスABB社のパワーグリッド(送配電)事業を買収。2020年スイスのABBから変電所や直流送電などの送配電事業を買収。2021年米GlobalLogic社を買収、2023年仏タレス社から鉄道信号事業を買収。

 一連の構造改革によって売上高構成の3割以上が入れ替わり、IT・エネルギー・社会インフラを中心とした事業体となりました。

注目ポイント

 現在の事業セグメントは、「デジタルシステム&サービス(DSS)」、「グリーンエナジー&モビリティ(GEM)」、「コネクティブインダストリーズ(CI)」の3つで構成されます。

【1】「デジタルシステム&サービス」(DSS)では、主にITシステムの構築と運用を行っています。

 2024年3月期売上の25.0%、営業利益の36.6%を構成しました。このセグメントはさらに、フロントビジネス、ITサービス、サービス&プラットフォームの3つの部門に分けられます。

 フロントビジネスでは、金融機関向けの基幹システムの構築・運用やDX提案、また官公庁や自治体、電力や交通などインフラ向けのシステム構築と運用を行っています。

 ITサービスでは、日立システムズを通して業務用システムの構築や運用・監視・保守を展開し、日立ソリューションズを通して製造業や流通、通信業向けのマーケティングソリューションなどを提供しています。

 サービス&プラットフォームではハイブリッドクラウド構築やITプラットフォームを提供します。同社事業全体に渡ってデジタル化支援するLumada(ルマーダ)を支える事業で、2021年に買収したグローバルロジック社が属します。

【2】「グリーンエナジー&モビリティ(GEM)」セグメントでは、原子力発電施設の建設・保守、再生可能エネルギーや脱炭素化関連サービスの提供(日立パワーソリューションズ)、鉄道システム、送配電事業(日立エナジー)を展開しています。

 最大事業は送配電事業を展開する日立エナジーでセグメント売上の6割を稼ぎ出しています。最近はAI市場の形成に伴うデータセンタ―建設需要の恩恵を享受し、業績を牽引しています。

 次に鉄道システムが大きく3割を構成します。鉄道システムは特に欧州で競争力が高く、売上の8割が海外売上で、世界で第3位に位置付けします。また2024年にも仏タレス社の信号事業を買収しました。今後はデジタル技術との融合による成長が期待されます。GEMセグメントは2024年3月期売上高の29.4%、営業利益の21.9%を構成しました。

【3】「コネクティブインダストリーズ(CI)」セグメントでは産業機械やロボット、半導体製造装置、国内家電事業を展開しています。

 このセグメントでは日立ビルシステムによるエレベーター事業が最大で3割を構成します。次に半導体製造装置と血液分析装置を主力とする日立ハイテクで2割を構成します。CIセグメントは2024年3月期売上高の29.5%、営業利益の35.2%を構成しました。

【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。

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