「費用対効果」をどう考えるか
ただ、鉄道に目を転じると、巨額の負担が生じる地元自治体からの反発もあってルート選定がストップしている北陸新幹線のような例もある。計画を広げるほど、あちこちで同じことが起きるのではないか――。
「同じことを何度も言わせるなよ。計画論というのは財源を含めさっき言った3つのバランスをどうとるか。このぐらいの事業はやらなきゃおかしいと、我々は財務省には迫るんだろうな。表ではしないが。
なぜって? 議論はちゃんとして決めるが、表でやると“そんな道路はいらない”とか極端な意見が出てくるから」
計画が進められている道路や新幹線では、いずれの事業も着手が決まった後になってから、「費用対効果」が悪化するケースが相次いでいる。
費用対効果「B(ベネフィット)/C(コスト)」とも略される指標だが、投下する建設費に対して移動時間を短縮するなどの効果がどれだけ発生するかを数値化したものだ。事業着手の目安とされてきた「1」を超えているとして着手したものの、その後、分母に加算される必要な費用が膨らむ一方、周辺の人口減少が加速して1を切ってしまいがちだ。佐藤氏 はこう反論した。
「社会資本の便益は、交通量のように計算できる要素は実は少ない。例えば、能登半島の生命線になっている国道249号の便益を、災害前から計算しようとしてもできないわけで、どうしても過小評価になる。じゃあ、B/Cが低いからといって、みすみす災害を起こさせていいのか、と問われたら誰も答えられない。なんでB/Cばかり言うのかね」