福岡県知事賞を受賞した『蜜な干し芋』
自信をつけてあげるのも役目
厳しさこそ本当の優しさだと言いました。それは僕がじいちゃんやばあちゃんの可能性を信じているからです。
年寄りだからとなめてはいけません。うきはの宝で働くばあちゃんたちは、みんなパワフル! 明るくて、世話を焼くのが好きで、がんばり屋さん。シャイなところもあるけれど、自分の言いたいことはピシャッと言う。わがままだなぁと、こっちが苦笑いする場面もあるほどです。
そんなばあちゃんたちだけど、意外と自信はありません。自分たちが作る料理に値段をつけようとすると、必ず僕とぶつかります。「そんなの高すぎる!」って。経費や人件費がかかることを説明しても、「いいや、そんなのダメ。百円で売りなさいよ」「高すぎると誰も買ってくれんよ」の一点張り。
おまけに商品がヒットしたり評価されたりしても、すぐ忘れちゃう。だから、「大丈夫、絶対に売れる!」「みんな喜んでくれとるよ」って、何度もそう言って自信をつけてあげるのも僕らの役目かな、と思っています。
責任感も強いんです。
干し芋作りの時に、蒸し器のスイッチを入れ忘れて、芋を腐らせてしまったことがありました。その失敗にショックを受けて「会社に多大な迷惑をかけたから、責任を取って辞めます」という人まで出てきた。もう切腹する勢いでした。
でも、ミスなんて誰にでもあるじゃないですか。すべての責任は、経営者である僕にある。五日間くらいかけて説得して、ようやくまた一緒に働いてもらえることになりました。
終わってみると、何でも勉強になります、本当に。
※大熊充著『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』から一部抜粋して再構成
【プロフィール】
大熊 充(おおくま・みつる)/1980年、福岡県うきは市生まれ。うきはの宝株式会社代表取締役。地元の高校を中退後、独学でデザインを学び、2014年デザイン会社を創業。デザイン会社経営の傍らソーシャルデザインを学び、地元うきは市の地域課題を解決すべく様々な活動を開始。生活に困窮し、生きがいを失っている高齢者に「生きがい」と「収入」を創出すべく2019年、うきはの宝株式会社を創業。福岡県知事賞を受賞した『蜜な干し芋』、発行部数5000部の『ばあちゃん新聞』など、ばあちゃんの知恵を活かしたヒット商品を続々と世に送り出す。75歳以上のばあちゃんがいきいきと働くうきはの宝の取り組みは、認知症専門家からも注目を集めている。