大統領候補として支持率トップを独走する李在明氏(NurPhoto via/AFP)
韓国情勢に詳しい伊藤忠総研チーフエコノミスト(代表取締役)の武田淳氏はこう言う。
「韓国の法曹関係者に聞いた限りですが、就任前に起訴されて裁判が続いているケースは、法で明文化されているわけではなく、就任後に判決が出るのか、出ないのか、もし有罪になったら大統領としての地位がどうなるかははっきりしていないようです。大統領の権限は非常に大きいので、何らかの手段で抑え込むだろうとは言われていますが、それを世論が許すのかという問題もあります。野党にとっては、李氏を大統領候補に選ぶリスクがなくなったわけではありません」
李氏の裁判問題は完全に解決したわけではなく、最高裁の“決断”によっては、大混乱が起きかねない。野党がそこをどう判断するかがポイントだと武田氏は言う。
「今の与党と野党の支持率は、各種の世論調査を見ると野党が10%ポイント程度上回っていて、この支持率がそのまま勝敗の確率と言えるでしょう。野党はリードしているので、別の候補でも勝てると判断すれば、李氏の裁判リスクを避けて、別の候補を選ぶ可能性はあります」
「大統領弾劾に憤る保守層」の支持を集める与党候補も
では、野党の候補には、他に誰がいるのか。崔氏はこう言う。
「野党では、金慶洙(キム・ギョンス)前慶尚南道知事、李洛淵(イ・ナギョン)前首相、金富謙(キム・ブギョム)前首相らの名前が挙がっています。しかし、大きなスキャンダルなどがない限り、李氏の独走体制が続くと予測されています」
やはり李氏が優勢だという。一方の与党側には、李氏に対抗できる有力な候補者はいるのか。
「与党では、多数の候補の名前が挙り、激しい候補争いが予想されますが、保守派のなかでは、大統領弾劾に賛成、または肯定的な立場を取った候補を“裏切り者”と見なし、強く反発する傾向があります。そのなかで尹大統領弾劾に批判的だった金文洙(キム・ムンス)雇用労働部長官は高い支持率を記録しており、弾劾に憤る保守層の支持を集める可能性が高いとみられています」(崔氏)
与党の候補者については混戦模様で、まだ特定の候補に絞り切れていないのが現実だ。その背景には、大統領の弾劾裁判が進行していたことがあると武田氏は言う。