どこのメーカーのコピー機かは関係ない?(イメージ)
いつの時代にも「それ、若い世代には通じませんよ!」という表現や言葉は多数存在する。情報伝達やコミュニケーション手段となるものは、適宜アップデートして誰もが分かるようにするのが望ましいが、なかなかそうならない実例もある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、「なぜか残り続ける古い表現・言葉」について考察する。
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マイクロソフトのWord、Excel、PowerPointなどを使っていると、「保存」をする必要があります。その際に画面左上の四角いアイコンをクリックするわけですが、これが「フロッピーディスク」をモチーフにしていることを知らない人も多くなっているのではないでしょうか。パソコンが一般に普及した1990年代後半、保存メディアの主役はフロッピーディスクでした。それがこの四角いアイコンの由来なのです。
その後、保存メディアはCD-RやUSBになり、いまやクラウド保存も増えてきていますが、そこをアップデートすることなく、フロッピーを2025年になっても保存のアイコンに使用しているのは不思議です。いっそ、「昔はフロッピーというものがあってね……」と言い伝えさせ、歴史を残す意味合いでもあるのかと勘ぐりたくなるレベル。
私が新卒で会社に入った1997年、上司から「ゼロックスしといて」と言われて戸惑いました。そんな言葉を聞いたことがなかったので「それって何ですか?」と聞いたら「コピーしてくれって意味だよ!」と怒られました。当時のコピー機の世界最大手として知られたゼロックス社のことを念頭に置き、たとえ他社のコピー機を使っていようと、コピーをすること自体を「ゼロックスする」と言っていたのです。
ちなみに、アナログ世代の上司は「オレはカタカタが嫌いだ」と言っていました。「はっ? カタカタって何ですか?」と聞いたら、キーボードを打つ仕草をします。どうやら彼にとってはキーボードを打つ音がカタカタと聞こえるようで、ワープロやパソコンが普及し始めたことを苦々しく思っているようでした。
ほかにも、「写メ」という言葉も、若い人には通じにくいかもしれませんね。スマホで撮った写真を「写メ」と言っている中高年を見かけたことはないでしょうか。「写メ撮る?」「後で写メ送っといて」といった使い方です。
「写メ」とは、「写メール」の略称で、元々はJ-PHONE(現・ソフトバンクモバイル)による、カメラ付きの携帯電話で撮影した写真を電子メールに添付して送信するサービスのこと。「写真を撮ってメールする」というものですね。
ちなみに同社は「写メール」を商標登録していました。となると厳密には、ドコモのガラケーで撮った写真をメールで送る時には「写メ」とは言えないという理屈にもなりますが、この言葉は使いやすかったためか、携帯電話やスマートフォンで写真を撮る行為そのものを「写メ」と指すようになり、今もついつい使っている人がいます。