Osaka Metro中央線の新型電車(400系)。中央線は、大阪・関西万博の会場アクセスで重要な役割を果たす
鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第31回は「鉄道の輸送力」について。
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今回のテーマは、「輸送力」です。本年4月13日に開幕した大阪・関西万博(以下、万博)では、鉄道が会場アクセスで重要な役割を果たしています。なぜならば、輸送力を大きくすることが容易で、大量の人(旅客)を運ぶのが得意だからです。
それでは、そもそも輸送力とは何でしょうか。なぜ鉄道は大勢の人を運ぶのが得意なのでしょうか。今回は、それらを探ってみましょう。
列車の輸送量と運行本数
まず、輸送力という言葉の意味から探ってみましょう。輸送力とは、輸送できる能力です。具体的に言うと、単位時間内(例えば1時間)に一定の区間内で、どれだけの人(旅客)や物(貨物)を輸送できるかを示します。人を運ぶ旅客鉄道であれば、「列車1本で収容できる人数」×「単位時間あたりの列車の運行本数」で輸送力の値を求めることができます。
鉄道が大量の旅客を運ぶのが得意なのは、1列車に乗る旅客数や、運行本数を増やしやすいからです。鉄道では、車両の進路がレールによってあらかじめ決まっているので、複数の車両を連結した編成が長い列車を安全に走らせることができます。また、列車は、それのみが通行する線路を走るので、安全対策を施せば運行本数を増やすことができます。
いっぽうバスでは、連接車を除き、複数の車両をつなげて走ることができません。また、バス1台が運べる旅客の数は、鉄道車両1両のそれよりも少ないです。もちろん、バスの運行台数を増やせば輸送力を増大できますが、それは鉄道ほど容易ではありません。
なお、鉄道車両とバスにはそれぞれ「定員」があり、定義が異なります。鉄道車両の「定員」は、利用者が快適に乗ることができる人数(サービス定員)です。いっぽう、バスの「定員(乗車定員)」は「安全な運行を確保し、乗車できる最大人数」なので、鉄道車両とは意味合いが異なります。