それでもまだ、親族が成年後見人になっても預金を自由にできるわけではありません。本人に1200万円以上の現預金や株式があり、親族が後見人になるケースでは「後見制度支援信託」か「後見支援預金」の利用を求められます。いずれも本人の日常的な支払に必要な金銭を親族後見人が管理し、その余りの金銭を預金や信託として銀行に預け入れ、裁判所の指示書を受けて払い戻す制度です。この制度を活用することで、適切な本人の財産管理ができます。
このように凍結された預金の解除は困難なため、認知能力の低下が感じられたら、本人から親族等へ有効な代理権付与を行ない、銀行が代理人の届出を受付けている場合は、当該代理人と取引を行なうことも可能です。その代理人としての届出をしておけば、本人の認知能力が著しく低下しても代理人が預金の引き出しを行なえます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年5月9・16日号