深夜でも「適当でちょうどいい食事」を楽しめる(日高屋の中華そば)
深夜の赤坂の日高屋はテレビ局員たちであふれている
いま、安すぎる店に入ることを恥ずかしいと感じる空気がある。「デートでは絶対に嫌」「せっかくの外食だから」という言葉とともに、チェーン店が排除されがちである。日高屋という名前を口に出した途端、「ああ、あそこね」とやや距離を取られることもあるだろう。しかし、これは間違った店の捉え方である。店全体を肯定する必要はない。むしろ、目的に応じて、良い部分だけを切り取って利用すれば良い。たとえば、深夜にラーメンとハイボール、あるいは2次会帰りにチャーシュー1皿だけつまむ。そうした「適当でちょうどいい食事」を許容できる場所が身近にあることは、忙しい現代人にとって明らかな強みである。
今年の3月中旬に、台湾に滞在して、現地で評判の中華料理店に次々と入った。香り立つ八角、ジューシーな豚肉、もっちりした麺、屋台の活気。最初の3日間は、舌も心も踊った。しかし4日目、突如として箸が止まり、胃が重く感じた。野菜が足りない。油が多すぎる。塩分も強い。台湾では生野菜があまり出ない。ビタミンはフルーツで摂るという文化だ。炭水化物と脂肪中心の食事が続き、体が悲鳴を上げた。そんなとき、自分を救ってくれたのがサイゼリヤだった。サイゼリヤでサラダを頼むと、友人と我を忘れてガツガツ食べたものだ。
日本において、日高屋もまた、同じ役割を果たしうる。どこでも食べられるものではないが、どこにでもある。派手さはないが、味のブレがなく、胃にやさしい。無理して外食を楽しもうとしなくてもいい。気張る必要のない場所として、日高屋は非常に優れている。中華料理というと、油っこさや濃い味を連想するかもしれないが、野菜たっぷりタンメンのように、炒めたものではなく茹で野菜を提供している点は特に評価できる。実際、このメニューには成人一日分の半分近い野菜が使われており、ビタミンや食物繊維を補う目的にも適している。
夜に入れるという点も大きなメリットである。居酒屋では酔客が騒ぎ、コンビニには温かい食事がない。ファミレスは深夜営業を縮小している。夜遅くなって、あたたかい中華を落ち着いて食べられる店は、もはや日高屋しか残っていない地域もある。酔いを冷ますための一杯、終電後の空腹を満たすための一皿、仕事終わりの小さなご褒美。大きな目的を持たずとも、ちょうどいい満足感を与えてくれる場所である。実際、東京・赤坂にある深夜の日高屋では、近隣にオフィスを構えるTBS局員やテレビ制作会社の人で溢れている。