中学受験塾大手のSAPIX小学部、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研に「合格実績」の算定基準を聞いた
少子化が進むなかでも過熱する中学受験戦争の裏側を、フリーライターの清水典之氏が、公表データや取材をもとにレポートするシリーズ「中学受験の“不都合な真実”」。今回は大手進学塾が宣伝材料とする毎年度の「合格実績」について、各社へのアンケートと識者への取材をもとに、数字のカラクリについて検証する。
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大手塾4社の難関校合格実績を合計してみると…
消費者庁が景品表示法の啓蒙のために作成した「事例でわかる景品表示法」には、優良誤認の事例として5業界の事例が載っている。「牛肉のブランド」や「中古自動車の走行距離」と並んで示されているのが、「予備校の合格実績」だ。10年以上前だが、2011年に首都圏で予備校を運営している2社と関西の予備校1社が合格実績を水増ししているとして、消費者庁が不当景品表示法に基づく改善措置命令を出している。塾や予備校の合格者実績は、「あまり当てにならない」というのが、一般的な受け止められ方ではないだろうか。
中学受験でも、大手塾は「開成○人! 桜陰○人!」と合格者実績を公式サイト上に大きく掲げている。一方、試しに大手塾が公表する難関校の合格者数を合計すると、学校側が公表する合格者数を超えるという現象が起きていることがわかった。
たとえば、首都圏にある大手塾4社の開成中の合格実績(2025年)を合計してみると、SAPIXが263人、早稲田アカデミー(以下、早稲アカ)が161人、四谷大塚が128人、日能研が38人で計590人だった。しかし、開成中側が発表した同年度の合格者数は431人で、159人もオーバーしている。
女子の名門・桜陰学園中も、SAPIXが180人、早稲アカが95人、四谷大塚が72人、日能研が22人で計369人だが、学校側の発表は289人で80人のオーバー。筑波大附属駒場では、上記4社の合計が197人に対し、学校側の発表では131人で66人オーバーしている。海城では、同644人に対し学校側が577人で67人オーバー、豊島岡では同651人に対し学校側が540人で111人オーバーである。他の難関校もざっと見た限り、塾各社の合格実績の合計が、学校が発表する合格者数を超えていることが多い。
そもそも首都圏の学習塾はこの4社だけではない。中小の塾が多数あり、個別指導塾もあり、そこからも合格者は出ているはず。それらを足せば、塾側が公表する合格者の総数はさらに膨らむに違いない。