MINIの特徴でもある丸型ヘッドライトではなく、SUVモデルとして先にデビューしている「カントリーマン」と同じ趣旨の変形角形のヘッドライトを採用した「エースマン」
輸入車の人気ブランドとしてすっかり定着したMINIシリーズ。2024年も相変わらずの強さを見せ、販売台数は1万7165台(JAIA=日本自動車輸入組合調べ)を記録し、輸入車ナンバー1の座を維持した。そのMINIシリーズといえば、ベーシックな3ドアと、その5ドア版と、それよりふた回りほど大きなSUVボディの「カントリーマン(旧クロスオーバー)」という構成によって、高い支持率を誇っている。今回、そのサイズ構成の中間を埋めるように仲間入りしたのが、BEV(電気自動車)専用モデルの「エースマン」だ。
シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は自動車ライターの佐藤篤司氏が新しいMINIエースマンの実力を試乗して探った。
欲しかったサイズ感をキッチリと埋める存在
MINI史上初の電動コンパクトSUVとして登場したエースマン。丸目のMINIとはひと味違った異形型ヘッドライトが与えられ、キリリとした表情になり、さらに小さくもなく大きすぎもしないという手頃なボディサイズです。こうしたディメンション(寸法)でエースマンの位置づけをボディサイズの比較で確認してみましょう。
まずMINIでもっともコンパクトなサイズ枠に入る3ドアハッチバックのクーパー(SE)は全長3,860mm×全幅1,755mm×全高1,460mm、ホイールベース2,525mm。そしてMINI史上最大のカントリーマン(SE)は全長4,445mm×全幅1,845mm×全高1,660mm、ホイールベース2,690mmです。この2モデルに対してエースマンは全長4,080mm×全幅1,755mm×全高1,515mm、ホイールベース2,605mmです。最大の違いは全長でエースマンは3ドアハッチより220mm長く、カントリーマンよりも365mm短い。さらにホイールベースではクーパーより80mm長く、カントリーマンより85mm短くなっています。つまり、各サイズを比較してみるとエースマンがサイズの間を埋めるような設定になっていることが分かります。
このようにMINIシリーズの中でサイズによる棲み分けが行われているのです。その上で最大1,005Lまで拡張可能なラゲッジスペースと、5名乗車の広い車内空間を実現。「カントリーマンもいいけど、MINIらしい小さめのSUVが欲しい」という要望に応えるには、最適なモデルといえます。
程よいサイズ感で実用性も高いとなればMINIとしてだけでなく、コンパクトSUVとしても十分に魅力的。ただし、選択肢はモーターのみですが、仮にガソリンやディーゼルといったエンジンの選択肢があれば「どれほど良かったか」と、思ってしまうのは仕方がないところ。まぁ、現状ではそれを望むのは不可能ですが、モーターの出力別に3グレードが用意されていて選択可能です。
まずベーシック仕様の「E」には最高出力184馬力(135kW)のモーターと42.5kWhの駆動用バッテリーが搭載されます。つぎにスポーティな「SE」には最高出力218馬力(160kW)のモーターと54.2kWhの駆動用バッテリーが与えられています。さらに「SE」と同じバッテリーでありながらも、よりパワフル仕様のスポーツモデル「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)E」の出力は258馬力(190kW)となっています。
また売れ筋でもある今回のテスト車両「SE」は、一充電あたりの走行距離が414km(WLTCモード)であり、休日ドライブにも十分対応できます。実際にはカタログモードの80%の走行可能距離ということで考えると満充電で320~340kmほど。ただし、外出先での急速充電では80%ほどの充電量で、ひと区切りとすることがバッテリー保護のために推奨されています。それを考慮するとロングドライブなら250kmぐらいで急速充電を行うというペースで走ると安心できると思います。あとSUVというカテゴリーながら3グレードともに前輪駆動で、4WDはありません。
コロッとした愛らしいリアスタイルはMINIに共通する優れたデザイン言語。街でも自然の中でも存在感を発揮する。エースマンには車載カメラを使用した全方向(前後&左右)記録可能なドライブレコーダーを標準装備