中国電子商取引最大手・阿里巴巴(アリババ)集団の創業者、ジャック・マー氏(フランス・パリ、AFP=時事)
中国で最近流行している「潤」という言葉は、さまざまな理由からより良い暮らしを求めて中国を脱出する人々を指す。そのなかでも日本にやってくる中国人を「潤日」(ルンリィー)という。この全く新しいタイプの中国人移民たちを取材した中国・東南アジア専門ジャーナリスト・舛友雄大氏は、その新規性や奥深さを痛切に感じ、日本の政治、経済、社会に見逃せないほどの大きなインパクトをもたらしつつある現状が見えてきたという。たとえば、中国アリババグループの創業者ジャック・マー氏も日本に生活の拠点を構えているとも報じられている。その暮らしぶりについて、舛友氏の著書『潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』より一部抜粋・再構成して紹介する。
2022年ごろから伝えられ始めた日本滞在情報
日本に身を寄せる中国人企業家の代表格が、ジャック・マー(馬雲)氏だ。
週刊誌『FRIDAY』2022年12月2・9日号(11月18日発売)が、「箱根の大豪邸で悠々自適生活」と伝えた。盟友でソフトバンク創業者の孫正義氏から延床面積2000平米を超える物件を譲り受け、大好きな寿司を堪能する日々を送っているとの内容だった。
続く、同年11月29日には英紙『ファイナンシャル・タイムズ』が後追いし、マー氏が「東京の中心部に半年近く滞在」と詳報した。家族と一緒に東京郊外の温泉地やスキーリゾートに滞在しているなどと暴露した。
翌年2023年5月1日には、マー氏が東京大学傘下の研究組織「東京カレッジ」の客員教授に就任したことが発表された。マー氏に対する期待として、重要な研究テーマに関する助言や支援、特に持続可能な農業と食料生産の分野で、東大研究者と共同研究や事業を実施すること、さらに講演や講義を通じて、起業、企業経営、イノベーションなどの経験や先駆的知見を学生や研究者と共有することが言及された。