ハロウインターナショナル安比校が開校した岩手県八幡平市安比高原は、スキーの名所としても知られる
「潤」は、中国で最近流行している言葉で、さまざまな理由からより良い暮らしを求めて中国を脱出する人々を指す。そのなかでも日本にやってくる中国人を「潤日」(ルンリィー)という。この全く新しいタイプの中国人移民たちを取材した中国・東南アジア専門ジャーナリスト・舛友雄大氏は日本にやってきた「潤日」たちが、日本の政治、経済、社会に見逃せないほどの大きなインパクトをもたらしつつある現状が見えてきたという。中国から日本に脱出する人々は日本に何を見出しているのか。舛友氏の著書『潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』より、一部抜粋・再構成して紹介する。
中国人が安比で設立した英国名門校のインター校
「息子が上海語を話せるようになったんです」
東北地方のリゾート地に鳴物入りで登場した、中国とも縁の深いインター校に通わせる中国人パパが笑いながらそう言う。
「ハロウは上海に救われました」
このパパが言う「ハロウ」とは、2022年に岩手県八幡平市に開校した全寮制のハロウインターナショナルスクール安比ジャパンだ。日本のメディアでは、同校は450年の歴史を持つ英国の名門校ハロウスクールの「姉妹校」であると報じられている。「安比の自然で名門教育」(読売新聞)、「英全寮制名門校を地域活性化の拠点に」(日本経済新聞)といった見出しが踊った。
7年生(日本の中学1年に相当)で入学し、日本への留学ビザが必要な場合、初年度の諸費用は、出願料、入学料、入学保証金を合わせて167万4000円、そこに年間の学費930万2250円を足し、計1097万6250円となる(2024年10月時点)。都内のインターと比べてもかなり高額だ。
パパとともに私と会ってくれた中国人ママは、確かに安くはないものの、中国ではスキー教室が1時間1万~2万円ほどするので、通わせる時間やお金が節約できることを考えると、それほど高くもないと話す。
「とにかく体育の授業が多いんです。体力校ですね。男の子のほうが適している」
と、チャットアプリWhatsApp の画面を見せながら話す。職員が随時生徒たちの日々のアクティビティの様子を写真や動画付きで報告しているのだ。
ハロウインターナショナルスクールはタイ・バンコクにも校舎を構えるが、北京(2005年開校)、香港(2012年開校)、上海(2016年開校)、重慶、海口、深セン、南寧(いずれも2020年開校)と、中国で事業を急拡大してきた。