昼酒の肴としてあまりにも優秀すぎる上質ミノ
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第11回は浅草の焼肉屋で仕事を忘れて(?)焼きまくる。【連載第11回】
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気が向いたら昼日中から酒を飲む。それは、昼日中から湯に浸かるのと同じくらいに品行方正なる人々にとってはフシダラな行ないである。しかしながら、そういう人たちであっても、実際に明るいうちから湯に浸かって汗をかいた後でビールをひっかけてみるならば、その気分爽快なることに、容易に異論を挟めるものではないだろう。
まして、初夏を迎えたこの季節。昼下がりの日差しは私をビールに誘う。レモンサワーの誘惑は私を鷲掴みにしてあの店この店の前へと導くのである。
そこで本日、向かいますのは、前回の蔵前に続いて再び台東区の浅草だ。雷門から仲見世の左手の細道に入り、文扇堂の角で左へ曲がって紀文寿司の前を抜け、付き当たって右、それからすぐ左に入ると、たぬき通りだ。昼酒連載の第5回で訪ねたバー「浅草サンボア」はここにあるが、これから行くのはさらにその先、左手へ入ったところにある「金楽」という店である。
シブい焼肉屋である。表に置かれた看板には、黄色と橙色の中間色の地に墨文字で店名が入り、真ん中は青い七輪。その中で赤々と炭火が燃えていて、七輪の両サイドに、焼肉、炭火焼と、朱で書いてある。なんだか、あったかくて、ほっこりくる看板で、この店に来るたび、しばらくこれを眺めてから入店するのが私の習慣だ。
名店の看板というのは味があるものだ